(※写真はイメージです/PIXTA)

株式などとは違い、価値が暴落するリスクが低く“安全”とされる「金」。価格は20年以上も上昇を続けている人気の資産です。しかし、そんな金を売却する際は注意が必要だと、多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士はいいます。税務調査によって多額の追徴税額を課されたAさんの事例をもとに、金売却時の注意点をみていきましょう。

「金の売却」が税務署に“バレた”ワケ

そもそも、なぜ税務署はAさんの申告漏れに気づいたのでしょうか。その理由のひとつに、「ルールの厳格化」があります。実は2012年より、貴金属売却時のルールが厳しくなりました。課税逃れを防ぐ目的で、「金地金(きんじがね)等の譲渡の対価の支払調書制度」が施行されたのです。

 

この制度は、金の取扱業者を通じて200万円超の金地金を売却・交換した場合、マイナンバーを含めた支払調書が税務署に提出されるというものです。

 

これを読むと、「じゃあ200万円以下の売却であれば申告せずに済むのか」と思われるかもしれません。しかし、200万円以下の取引であっても、金を売却する際は本人確認の必要があります。

 

さらに、金地金にはシリアルナンバーがついており、このシリアルナンバーに購入者情報が紐づけられているため、税務署はここから金取引を把握することも可能です。

 

したがって、金額に関係なく、金の売却については税務署に把握されていると考えたほうが無難です。

金の売却は「確定申告」が必須

Aさんのように、個人が金を所持している場合、持っていた金を売却して得た所得は「譲渡所得」として、確定申告が必要となります。

※ 参考:国税庁HP「金地金の譲渡による所得」

 

土地や株式を売ったときも譲渡所得ですが、土地や株式の場合は「分離課税」として、後述する総合課税の所得とは切り離して税金を計算します。

 

具体的には、株式の売却益に対しては20.315%、土地の売却益に対しては長期(5年超):20.315%、短期(5年以下):39.63%の所得税・所得税が課されます。

 

一方、金については「総合課税」となっており、給与所得など他の所得とまとめて課税されます。そのため、所得が高くなるほど税率が高くなる超過累進課税となります。

 

金売却時にかかる所得税は、その金の「所有期間」によって計算方法が変わります。5年以内は「短期譲渡所得」、5年以上は「長期譲渡所得」に分類され、それぞれ下記の式によって求められます。

 

短期譲渡所得(所有期間5年以内)
……売却金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除50万円

 

長期譲渡所得(所有期間5年以上)
……(売却金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除50万円)×2分の1

 

ただし、年金以外の所得が20万円以下である場合は申告は不要です。

 

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