複雑極まる、定年退職前後の社会保険制度
木村千代子さん(仮名)は現在62歳、84歳の母親と一緒に実家で暮らしています。
勤務先は主に化学製品の製造を行う中小企業で、勤続17年になる千代子さんは庶務全般を一人で担っていました。60歳の定年退職後も嘱託で勤務していましたが、一人で業務全般を抱えていることによる休みの取りづらさや、通勤に片道2時間かかることなどから、退職することにしました。
千代子さんは独身ですし、実家暮らしです。退職することによって、収入が減る不安はありました。しかし、一緒に暮らす母親は元気で年金収入もありましたし、昨年からは千代子さん自身、月7万円ほど特別支給の老齢厚生年金を受け取っていましたから、職を探しつつ失業手当をもらえば、なんとかなるのではと思っていました。
ハローワークで知った驚愕事実
ところが、退職後、ハローワークに足を運んだ千代子さんは退職したことを後悔することとなります。失業手当を受け取ることでいま受け取っている年金が全額支給停止となることを知ったのです。千代子さんはがっかりしました。しかし、今後も働き続ける意思があったため、結局雇用保険の失業手当を受け取ることとしました。
そして年金の支給停止通知が届いたころ、思わぬ出来事が起こります。元気だった母親が風邪を引いて体力が落ちたことをきっかけに、介護施設に入居することになったのです。母の年金収入の多くは介護費用に消え、失業手当を受けても毎月赤字となりました。
手続きなどに慌ただしく、求職活動も思うように進められません。自宅の修繕費や自動車の修理費用も必要となり1,600万円あった自身の資産も300万円ほど減少しました。退職早々の誤算に不安が募っていきました。
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