予想外の妻の死
亀田春樹さん(仮名/72歳)は大手企業の元社員です。亀田さんは長く独身のままでしたが、55歳のころに知り合った5歳年下の妻の幸恵さんと結婚しました。お互い初婚で子供もおらず、夫婦2人でリタイア後の生活を楽しんでいたのでした。
2人とも長年会社勤めをしており、公的年金も亀田さんは月額で15万円程度、妻の幸恵さんも13万円程度受け取ることができ、合計で月額28万円程度を受け取ることができていました。
しかし、そんなある日、妻の幸恵さんに肺がんが見つかってしまいます。発見されて検診を受けた際には、すでにステージ4まで進行していました。一旦は治療を終えたのですが、転移が発見され、発見から約1年半の闘病生活を経て亡くなりました。
一緒に過ごしていた亀田さんは、妻を失った寂しさとともに、長い闘病生活を終えて正直ホっとした気持ちもありました。
遺族年金への誤解
幸恵さんの死後、亀田さんは死亡手続きを済ませにいきました。その際に亀田さんは想定外の事実を告げられます。
亀田さんは「遺族年金がもらえる」と自身が契約している生命保険の営業マンより説明を受けており、年金受給額の4分の3は幸恵さんの死後支給されると思い込んでいました。
しかし、亀田さんの予想に反し、幸恵さんが受け取っていた公的年金の支給は完全に停止され、亀田さんの受け取ることができる公的年金は自分の分の月額15万円程度の年金のみになったのです。亀田さんは驚きのあまり腰を抜かしました。これでは一人分の生活費も賄うことすらできません。
その理由は、遺族年金は老齢厚生年金の4分の3が支給される制度ですが、自分の受け取る厚生年金が配偶者の遺族厚生年金よりも少ない場合、その差額が給付される制度になります。自分の厚生年金の金額のほうが多い亀田さんは幸江さんの遺族年金を受け取ることができないのです。
説明した営業マンも亀田さんご夫婦の状況を誤認して受け取れないものを受け取れると説明してしまっていたのですが、さらに亀田さん自身も誤って認識し、厚生年金部分のみでなく幸恵さんの受取っている基礎年金も含めて4分の3受取れると誤解していたのでした。
そしてさらに、亀田さんはもともと自炊が苦手で、幸恵さんを失ってからの食事は外食かスーパーの総菜に頼るようになり、そして話し相手欲しさに行きつけのスナックに通う機会も増えていきました。また、一人暮らしの家に帰ると誰も待っていない、暗い部屋への寂しさからか、街中で店内の明かりが煌々と光るコンビニを見かけるとどうしても入りたい衝動に駆られ、お酒やお菓子などを買う無駄遣い癖がついてしまいました。
細々した部分の出費ですが、結果、2人で生活していたときよりもむしろ支出は増えてしまうことになり、月額約15万円の年金額に対し毎月10万円も超過してしまうような状況になってしまったのです。
そして、自宅のリフォーム代も重なり、妻の死後4年で2人で貯めた資産は底をついてしまったのでした。
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