(※写真はイメージです/PIXTA)

自信がある人とない人では、社会での生き方にどのような違いがあるのでしょうか? 自信がなく、自己批判することは短所ではなく、本当の実力と自信を高めるための第一歩としてむしろメリットであると、『「自信」がないという価値』(河出書房新社)の著者であるトマス・チャモロ=プリミュージク氏はいいます。失敗や人の目が気になって思い切ったパフォーマンスができないという人のための「社交スキルを上げる」3つの方法を、詳しく見ていきましょう。

(3)とにかく準備を怠らない

社交不安障害は、このままでは他人に悲惨な印象を与えることになるぞという警告の役割を果たしている。それに加えて、恐れているイベントを前にして、失敗して恥をかく確率を最小限に抑えるために、積極的に準備をするモチベーションにもなるのだ。

 

何か社交上の失敗が予想されるとき(たとえば、デート、就職の面接、テスト、ミーティング、プレゼンなど、失敗すると面目を失うようなイベント)、理にかなった行動は一つしかない。それは、とにかく準備、準備、準備だ。

 

自信の低さは、おそらく実力の低さを正確に反映しているので(たとえ自分に厳しすぎる面も多少はあるにしても)、実力をつけるモチベーションの役割を果たしてくれる。もちろん、自分にプレッシャーをかけすぎてしまう嫌いもあるが、プレッシャーは向上心の邪魔にはならない。

 

現実的な自己批判がきっかけとなって目標ができたのなら、自己批判をせずに失敗を恐れていない状態よりも、能力を高められる可能性が高くなる。

 

自信があることは、実際のパフォーマンスの段階になれば役に立つだろうが、役に立つといっても微々たるものであり、それよりも自信があるせいで準備を怠ることのマイナス面のほうがずっと大きい。

 

逆に、自信が低くなるほど、自分のパフォーマンスに関する予想が悲観的になり、さらに念入りに準備しようという気持ちになる。そして、準備しすぎるくらい準備していれば、本番で少しくらい失敗してもカバーできるのだ。

 

学校一の秀才を思い浮かべてみよう。彼らはきっと、試験の難しさを予想するときは悲観的になり、失敗することをかなり心配しているに違いない。そうやって心配が絶えないので、真面目に勉強する。

 

または、就職の面接を控えた人や、大事な試合を控えたアスリート、オーディションを受けるアーティストでもいい。どんな分野であっても、自分の持っている能力を質の高いパフォーマンスに変換できるかどうかは、すべて準備にかかっている。そして、どれくらい熱心に準備するかは、自信のレベルと反比例するのだ。

 

これらの3つの方法を無視したい、または社交スキルに自信は関係ないという話が信じられないという人には、言いにくいことをあえて言ってさしあげよう。それは、社交スキルの自信を意図的に高くするのは、ほぼ不可能だということだ。

 

悲観的な人、慎重にリスクを避ける人、用心深い人から、楽観的な人、リスクよりもリターンを重視する人、自己評価が高い人へ、まるでスイッチを切り替えるように変身することはできない。

 

簡単にいうと、社交スキルに自信がない人から、自信がある人に変わろうとしても、本当は自信がないことがすぐにバレて、その結果として失敗するということだ(たとえ他人をだまし通すことができたとしても、自分自身はだませない)。

 

なぜなら、社交の場での性格は、子供のころの体験、さらには遺伝子レベルですでに決まっているからだ。

 

 

トマス・チャモロ=プリミュージク

 

ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン教授

コロンビア大学教授

マンパワーグループのチーフ・イノベーション・オフィサー

社会心理学者/大学教授

 

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※本連載は、トマス・チャモロ=プリミュージク氏による著書『「自信」がないという価値』(河出書房新社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「自信がない」という価値

「自信がない」という価値

トマス・チャモロ=プリミュージク

河出書房新社

本書は、ロンドン大学・コロンビア大学教授にして人材・組織分析の権威が 社会心理学研究に基づき、”自信のなさ”の美点とそれらを武器にする戦略を解説する。 ・自信のある人はたいてい勘違いしている ・自信のなさはあ…

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