社交スキルを向上させる3つの方法
社交スキルに対する自信の低さを、社交スキルの向上につなげるには、明確な方法が3つある。この3つの方法は、社交不安障害という極端なケースであっても有効だ。
(1)「悲観的な現実主義」を身につける
社交スキルに自信があることと、実際に社交スキルがあることの間の相関係数はほぼゼロになる。その理由は、自信がある人は自分の能力を過大評価するからだ。逆に自信がない人は、自分の欠点や弱点を自覚している。
そのため、自信の低さがもたらす第一の利点は、自分の社交スキルを正確に評価できることだ。言い換えると、自信の低さのおかげで、「悲観的な現実主義」を身につけられるということでもある。つまり、自分の社交スキルは理想の状態に達していないと自覚できるということだ。
では、どうやって自覚するのか。それは、否定的なフィードバックに耳を傾けるか、または他人が出す否定的なサインを見逃さないことだーちなみに自信がある人は、こういうことは絶対にしない。
社交スキルに自信がある人は、自分が思っているほど人気者ではないことを示す証拠を無視する傾向がある。それどころか、現実をゆがめてまで、自分は魅力たっぷりでみんなに好かれていると思い込もうとするのだ。
一方で、自信のない人はこの正反対だ。自分が好かれていることを示す証拠は無視し、あえて否定的な意見ばかりに注目する。もちろん、物事の悪い面ばかりを見るのは気が滅入るものだ。
しかし、自分のパフォーマンスを向上させ、実力をつけるには、これが唯一の方法になる。自分の弱点を知り、自信をなくしてもかまわないということを知る。何か気になることがあるのなら、気づかないふりをしてはいけない。むしろ対策のために行動を起こすことが必要だ。
皮肉なことに、自信の低さから生まれた悲観主義によってさらに現実的になれるのは、自信の高さから生まれた楽観主義が勘違いにつながるからでもある。昔から言われているように、「目の見えない人の王国では、片目が見える人間は王になれる」ということだ。
(2)たとえお酒の席であっても自意識を保つ
お酒を飲んで気が大きくなった経験はあるだろうか? 人はほろ酔い加減になると(泥酔ではない)、なんだか楽しい気分になり、普段なら恥ずかしいことが平気でできるようになる。アルコールには、社交の場面で自信を大きくしてくれる効果がある。もしこの効果がなくなったら、アルコールの消費も激減するだろう。
アルコールの効果は、自信の高さがもたらす効果と似ているかもしれない。人は酔っ払うと、オフィスのクリスマスパーティでカラオケを歌ったり、バーで気になった人に声をかけたりできる。素しらふ面だったら絶対に声をかけられないような相手でも、酒の力を借りればできるのだ。
社交スキルに対する自信の高さもそれと同じで、自分に対する抑制がなくなり、自然の本能に従って行動できる。一見するとすばらしいことのようだが、本当にそうだろうか?
素面のときに、酔っ払った自分の醜態を見た経験のある人なら(おそらく、ネットに投稿された動画や写真を通して)、アルコールに社交スキルを向上させる効果はないということに気づいているだろう。ただ周りが、酒のせいだからと寛容になってくれるだけだ。
それに加えて、人は酒が入ると、自分に対しても甘くなる。実際のところ、そういったことは利点でも何でもない。
もしお酒を飲んでも自意識から解放されなかったら、そもそもバカなことはしないはずだ。そして、それが素面であることのすごい点でもある。自分の行動を絶えず監視することで、「本当の自分」を出すことを抑制するのだ。
こう考えると、社交スキルに対する自信の低さは、実は素面の極端なバージョンであることがわかるだろう。そして社交不安障害(社交スキルの自信が極端に低い状態)は、社交スキルに対する自信のなさの極端なバージョンだ。
それと同じ意味で、社交スキルの自信が高いのは、酔っ払ったのと同じ状態だ。酒が入ると羞恥心がなくなり、酔いが覚めたら絶対に後悔するようなことをしてしまう。
まとめると、自信が低いと他人の評価が気になり、そして他人の評価を気にすることは社会生活に欠かせないスキルだ。
自信が高いのはその逆で、酔っ払ったときと同じように気が大きくなる。羽を伸ばし、人目を気にせずに行動できるが、結局は自分の評価を下げることになる。自分が自分に対していちばん厳しくなれば、他人から批判されることはなくなるだろう。