本質的な解決を図るための「隠居」!?
以前、筆者は家系図を作成したことがあるが、ご先祖の何代かにおいては「隠居」をして、家督相続を行っていた。生前に、次の代にバトンを渡すことで揉め事も少なかったのではないかと推測した。また、その制度がうまく機能していたので、隠居による承継を継続していたのではないかと思った。
現代においても、「隠居」できるような状況を作り出すことで円滑な承継ができるのではないかと考えている。有名な一族経営の事業会社においても、経営者としてふさわしい後継者に代表を任せ、株式も生前に贈与や譲渡で移転させながら、本人は会長職や相談役として第一線を退き、場合によっては経営からも距離を置いて余生を楽しんでいるのではないかと思う。
地主一族においても同様の仕組みを設けることが必要だ。すでに一族の「資産管理会社」を持っている方も多いと思われる。土地については、代々の土地であるため取得費が不明であることから資産管理会社(以下「法人」)への移転コスト(譲渡所得税や登録免許税など)が高額となるため、既存建物を法人に移したり、新築建物を法人で建設したりと法人で不動産を所有するような仕組みである。まだ、法人を設立していなくても銀行や税理士などから過去に提案を受けたことがあるのではないだろうか。
地主としての仕事を考えた場合、関係者は借地人や、建物の賃借人、管理する不動産会社、リフォーム業者、税理士、銀行など多岐にわたる。それぞれの、関係者と良好な関係を保ちつつも必要な意見は伝えなければいけない。また、不動産収支についても適切に把握をしておき、状況に応じて収支を改善させるような取り組みもしていかなければいけない。
つまり、不動産知識や財務知識はもちろんのこと、その人間性や経済に対する感度、将来の予見能力なども不可欠である。したがって、長男であるから法人の代表者、という訳ではなく適性のある人物(次男や長女、場合によっては孫)が代表者になるべきである。
場合によっては、数年試してみたが残念ながら能力的に不足していると判断すれば、次の代表者に託すことも必要かもしれない。
最終的に、代表者としてふさわしいと判断できれば、その人物に所有している株式を贈与などで移転させていけばよい。これによって、生前に承継は完了するし実質的に「隠居」出来るのではないかと思う。当然、土地については簡単に法人へ移転できないことから遺言を準備し相続時などに移転させていくことが必要である。
必ずしも高齢になってから相続対策を行うのではなく、元気なうちに承継を開始し生前に「隠居」するという方法が、将来の親族間での骨肉の争いを生じさせない円滑な承継の対策として必要であると思う。
まとめ:資産の配分を次世代に任せる、で本当によいのか
・相続税を圧縮したところがゴールではない
・相続税の納税できるところまでで対策完了とすると、後々大揉めになる可能性がある
・資産の内訳に不動産があれば平等に配分することはできない
・遺言により本人の遺志を残すことが必要である
・生前に「隠居」する方法を考えることも必要である
・資産管理会社の活用は円滑な承継に寄与する可能性がある
以上のポイントを押さえることが重要である。
小俣 年穂
ティー・コンサル株式会社
代表取締役
<保有資格>
不動産鑑定士
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
宅地建物取引士
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