(※画像はイメージです/PIXTA)

相続対策としての不動産活用では、銀行からの融資も確約されており、あとは本人が決断するだけというところまできて二の足を踏むケースも少なくありません。メリットは十分に理解していても、多額のローンを背負うことに不安を感じる人も多いのでしょう。では、決断に踏み切るべきか否かは、どのように判断すればよいのでしょうか。ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏がわかりやすく解説します。

建築するか否かの判断

銀行においても融資するか否か、融資額をいくらまでとするか、という観点においてはある種地主さんと同じ方向を向いている。銀行の審査においては、設定されている賃料単価の妥当性や、賃料下落のリスク、金利上昇のリスクなどを織り込んで収支の検証を行う。

 

融資してすぐに、返済不能な状態に陥ってしまっては、下手をすれば担当している銀行員の出世にも影響しかねないから真剣だ。

 

したがって、さまざまな資料の提出を受けて、返済にかかる蓋然性を審査している。

 

とはいえ、銀行も優良顧客に対しては融資を行いたいのが本音であるから、収益性が低い(収支が悪い)と判断していても直ぐに断るのではなく、自己資金を出してほしいであったり、連帯保証人をつけて欲しい(給与が高い方や個人資産の多い方)であったり、と追加依頼のうえ収支を補完させながら案件の組み立てを行おうとする。

 

また、銀行では収支のほかに保全(担保評価)の検証を行っており、昨今では「不動産鑑定評価額=担保評価額」とみる銀行もあるが、一般的には相続税路線価や公示価格から算出した土地価格に、建物の延べ床面積に銀行で定めている単価を乗じて算出した建物価格を合算した「積算価格」を担保評価としてみている。この、担保評価額がローンに対して不足していれば、共同担保や自己資金の拠出を依頼することになる。

 

つまり、意思決定の判断材料のひとつとしては「銀行がどの程度融資可能か」という点が参考になる。冒頭の事例のように「建築費の満額融資可能」との発言があれば、銀行としても収支や保全がカバーできているとの見立てをしていることが推測される。

 

一方で、ご自身で判断したいというのも1つであろう。その場合には、あらかじめ基準を設けておくということが重要である。たとえば、「満室想定に対して経費は30%、金利は4.0%、期間35年でプラスとなる水準でないと取組しない」など。

 

先ほどの図に当てはめて考えると、借入金は130百万円の水準で基準を満たす形になるため、ローンに対する表面利回りでは先ほどの事例より「+約1.0%」、建築費は「-20百万円」であることが必要になる。

 

[図表6]利回りの計算方法 出所:筆者作成

 

[図表7]利息・調整後収入別キャッシュフロー表 出所:筆者作成

 

もちろん、建築費は安く、収支はよく、が理想であると思うが、昨今の不動産市況においては基準が厳しすぎると、そもそも実現できなくなる。個人的には落としどころとして、経費30%、金利3.0%、期間35年ほどが妥当な水準であると考える。

 

このように、不安の正体を明らかにし明確な基準を定めておくことで意思決定の後押しになるものと思われる。

まとめ:建物を建築したほうがよいのか、否かを判断するには

・不安の原因がなにであるかを突き止める
・意思決定を先送りしたことで「機会損失」が発生していることも意識する
・シミュレーションを実施してさまざまな局面について予め理解しておく
・借入方法によっても収支が異なることを理解し、適切な借入戦略をとる
・銀行の審査に頼るのも1つであり、収支や保全が銀行目線でも足りているのかを・客観的に検証してもらう
・自分のなかでも予め明確な基準を設けておく

 

以上のポイントを押さえることが重要である。

 

 

小俣 年穂

ティー・コンサル株式会社

代表取締役

 

<保有資格>

不動産鑑定士

一級ファイナンシャル・プランニング技能士

宅地建物取引士

 

 

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