(3)任せたと言われても「ほう・れん・そう」を怠らない
すでに会長に退いた創業者から、「〇〇くん、あとは社長の君に任せたから、ぼくのことは気にせずしっかりやってくれたまえ」と言われたとします。すると、後継社長は「全権委任された」と思うのではないでしょうか。実は、私もこれで何回も失敗しました。
オーナーに権限委譲されたと思っても、オーナーは、これを簡単に撤回します。言ったことを忘れていることも多いのです。そして非常に細かいことも報告・連絡・相談がないと烈火のごとく怒り、不信感を持ち、それが積み重なると失脚の要因にさえなります。
「君に任せた」と言われたあとは、それを拡大解釈せず、経理、財務、人事のことなどを一層こまめに「ほう・れん・そう」するようにします。任せたといわれてから3年ほどは、オーナーとのパイプをむしろ太くするように心掛けるべきでしょう。
これをしなかったことで、たくさんの雇われ社長が解任されていることをお忘れなく。「君に任せた」は忘れていることもあるし、試している場合もあります。特に経理や人事は権力の源泉ですから、この2つをオーナーが同時に手放すことは経験上あり得ないことだと私は思っています。
また、「任せた」と言われたとたん、後継社長の使うお金が増えたという話もよく聞きます。放蕩経営をしているといううわさが経理から聞こえはじめたら、これはもう社長失脚のタイミングです。
ここまでご紹介したオーナー会社の後継者に必要なスキルは、おそらくみなさまが文献などで学ぶのとはまったく違う3項目だったと思いますが、実はこれが現実です。これからもオーナー経営者と上手に付き合うための、生きたスキルをご紹介していきたいと思いますので、参考にしてみてください。
福留 拓人
東京エグゼクティブ・サーチ株式会社
代表取締役社長