大企業を中心に急速に「学歴重視」に回帰している
最近の採用市場を見ていると、新卒(定期)・中途にかかわらず、学歴偏重の傾向を感じるようになりました。学歴に応じて差別に近い対応をするのは、おおむね大企業です。雇う側が採用にあたって学歴を重視するのは自由ですが、行き過ぎた学歴偏重はいかがなものかと首をかしげたくなります。
そうした危惧の声は、筆者のような人材コンサルタントだけでなく、採用事情に詳しいジャーナリストからも聞こえてきます。どうやら大企業が最近になって急速に学歴重視に回帰しているというのは間違いなさそうです。
ご存じとは思いますが、かつて採用にあたって学歴が重視された時代がありました。まさに学歴偏重社会の入口でした。そこに風穴を開けたのは2000年ごろに展開されたソニーの革新的な採用手法でした。
たとえば、エントリーシートに大学名を書かせないことが注目されました。白紙1枚のエントリーシートには「この紙面にあなた自身を自由に表現してください」と書かれていました。ウォークマンなどの画期的な新製品を生み出し、“ジャパン・アズ・ナンバーワン”の勢いがあったソニーならではの革新的な採用手法であったと思います。
当時のソニーはスティーブ・ジョブズのアップル社が「会社を買ってくれ」と申し出るような存在でした。学歴で優秀な人材をはじいてしまうのはよくないというソニーのアーティスティックな立ち位置が生まれ、ここから「学歴で区別や差別をするのはやめよう、それは無意味なことだ」というトレンドが当然のように広がっていきました。
さて、それなのになぜ、21世紀の今になって採用の様相が学歴偏重に回帰しつつあるのでしょうか。これは、いろいろな局面で明らかになっている日本の凋落に原因があるように思います。とくに企業における採用では、日本経済の縮図ともいうべきマイナス環境が複合的に影響しています。では、その一端を具体的に拾い上げてみましょう。