(※画像はイメージです/PIXTA)

王道な相続対策として、ローンを組んで賃貸用アパートを購入・建築する手法があります。ローンを組んだどきは大変でも、時がたてば、あのときの苦労などどこ吹く風……借りた本人が、自身の借入状況を忘れ去り、「借りっぱなし」状態となっているケースは多々あります。では、もしそのような状況下で相続が発生した場合、被相続人にどのような影響が出るのでしょうか。そもそも相続対策であったはずが、本末転倒です。本記事では、借りっぱなし状態のアパートローンの危険性について、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。

そもそも「アパートローン」とは?

アパートローンは、ほとんどの金融機関(メガバンク、地方銀行、信託銀行、信用金庫、生命保険会社など)の融資商品のラインナップに入っているものである。名称は、「アパートローン」や「不動産投資ローン」などさまざまあるが、ここでは多くの金融機関で使われている「アパートローン」とする。

 

アパートローンの資金使途は不動産の購入資金または不動産の建築資金、あるいは既存のアパートローンの借換資金である。

 

地方銀行や、信用金庫においては、アパートローンは主力商品としての位置付けであり、地方の金融機関が不動産価格の高い首都圏に敢えて支店を出して取組しているところもある。

 

アパートローンは金融機関が不動産を担保に融資を行うという基本的な商品構造であるが、それを構成する要素を抽出すると図表1のとおりとなる。各金融機関によって、当該構成要素に工夫を凝らしながら、他行他社との差別化を図っている。

 

そのうち、借入人としての立場から最も重視する項目が「金利」「融資額」「返済期間」の3点であり、相続人などが気にする点も同様であろう。

 

出所:筆者作成
[図表1]アパートローンの構成要素 出所:筆者作成

 

しかし、軽視されがちであるほかの項目についても非常に重要であり、相続対策の策定にあたっては適切に把握しておくことが大事である。したがって、図表1の「確認事項」に記載した事項については、それぞれ明確に把握のうえ整理しておく必要がある。

 

また、一般的になじみのない言葉かもしれないが団体信用生命保険(略して「団信」ともいう)とは、借入人個人が死亡した場合などに保険によりローンが完済される仕組みである。

 

団信に加入する場合には銀行から提示された金利に一定割合(おおむね0.3%程度)上乗せする形で支払いがなされる。アパートローンによる相続対策の観点では意図的に団信に入らないケースが一般的であるが、金融機関から団信の加入を融資条件とされる場合もあり得る。

 

なお、余談ではあるが住宅ローンにおいては団信への加入はほとんどのケースで必須である。

 

住宅ローンの場合は、ローンの返済原資(どのお金でローン返済をするかを「返済原資」という)を借入人個人の給料に依存しており、借入人が死亡や大病を患い仕事ができず給料が大きく目減りした場合にローン返済が困難になるためである。

 

※アパートローンの場合、保険金支給の要件として死亡がほんどであるが金融機関によっては三大疾病への罹患などででも支給されるものもある

 

一方、アパートローンの場合には、不動産の賃料収入を返済原資としていることから団信の加入は任意となる。もちろん、金融機関の融資審査においては不動産収入にストレスをかけて(たとえば賃料×70%など)賃料収入の下落が発生した場合でも返済が可能か否か検証を行う。

 

不動産収支に影響の大きい解約金について各金融機関で取扱が大きく異なっており、数千円から数万円の手数料のケースや、返済額に対して例えば2%を乗じた額とするケース、一定期間は料率による計算で手数料がかかるが、一定期間経過後は少額の定額手数料へ変更となるケースなどさまざまである。

 

これは、各金融機関が他行他社への借換されることや短期間で売却されることなどを抑制させるために戦略的に決定しているものと思われる。

 

 

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