(※写真はイメージです/PIXTA)

年収が高かった、退職金が多い、貯蓄がある……といった理由で、準備をせずに定年をむかえると、たとえ現役時代収入が十分にあっても、年を取ってから破産する事態になりかねません。Aさん(63歳)は、定年前に1度牧野FP事務所の牧野寿和CFPのもとを訪れ相談していたのですが、「定年退職」の開放感から支出を減らせなかったようで……。Aさんの事例をもとに、老後必要な資金額と準備方法、60歳以降での家計改善策についてみていきましょう。

“60歳で完全引退したい”…Aさんが筆者とした「約束」

4年ほど前、59歳のAさんが3歳年下の妻Bさんに連れられて、FPである筆者のもとに訪れました。Aさんは大手通信会社に勤め、定年退職を1年後に控えています。聞けば、「退職後のライフプランを相談したい」といいます。

 

筆者がAさんに抱いた第一印象は、「まだ十分働けそうな、エネルギーに溢れた方」。しかし、60歳で定年退職したあとは、働く予定はないそうです。

 

Aさんのその時点での年収は1,200万円(月額90万円+ボーナス120万円)※1。退職金は2,300万円※2支給されることが決まっており、貯蓄は1,800万円ほどでした。

 

※1 55~59歳の賃金:大企業42万7,000円、中企業36万4,300円、小企業31万8,300円(厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」より)。

※2 定年退職金:大企業:2,563万9,000円(中央労働委員会「大企業令和3年賃金事情調査」(確報))、中小企業:1,091万8,000円(大卒、東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)、従業員が10人~299人の都内中小企業)。

 

Aさんは老後について、「妻と旅行三昧したい」というほかにはなんのプランもなく、Bさんが老後の家計を心配して、「そんなの考えなくても大丈夫だよ」と嫌がるAさんを連れてきたそうです。

 

筆者は夫婦と老後の生活について話し合い、

 

・Aさんがこれから作成するという老後のプランが完成したら見せてもらうこと

・65歳までに退職金や貯蓄が枯渇することのないように、日頃からお金の使い方には注意し、定期的に貯蓄残高を確認すること

 

を約束し、その日は帰られました。

“年金の谷間”で贅沢三昧…Aさんの「拭えぬ後悔」

しかし、Aさんからその後連絡があったのは、4年後の最近になってからです。Aさんは63歳、Bさんは60歳になりました。

 

筆者が電話に出ると、Aさんは開口一番「お金ってこんなに早くなくなるんですね。楽観的に考えて贅沢していた定年直後をすごく後悔しています……」と話しはじめました。

 

詳しく話を聞いていくと、Aさんはこの4年間のあいだに、住宅ローンの残債約600万円を完済し、返済利息を約15万円削減できたそうです。しかし、同じく定年退職した同期と趣味のゴルフを楽しんだり、夫婦で温泉旅行に興じるように。老後を心配し、最初は旅行の誘いを断っていた妻のBさんも、高級温泉旅館に泊まり、そのサービスと名物料理のおいしさに感動したことをきっかけに、しだいにAさんに連れられて旅行を楽しむようになりました。

 

筆者のアドバイスを思い出し、毎月の支出額を抑えなければと思ったそうですが、結局現役時代と同様に約42万円かかっているといいます。

※ 生命保険文化センターによると夫婦で、老後の最低日常生活費は月額で平均23.2万円。ゆとりある老後生活費は平均37.9万円(生命保険文化センター「生活保障に関する調査」/2022(令和4)年度)より。

 

そして、60歳時点で4,100万円(退職金を含む)あった貯蓄は、思いのほか早いペースで減少。現在は、1,500万円しかないそうです。

 

Aさんは、貯蓄が減っているのに気づき、慌てて会社のツテを頼り再就職。厚生年金にも再加入しました。再就職先では、65歳まで年収300万円、その後70歳まで年収228万円ほどが見込めるそうです。

 

次ページ筆者がAさんに提案した「家計改善策」は…

※プライバシー保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。

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