「手段」のアドバイスは再現性が高くない
よく、名プレイヤーが名コーチになれるわけではないと言われます。それは人徳がない、人を統率できないなどの要因もありますが、「なぜうまくいったのか」を因数分解して、言語化することができないことが大きいからです。
同様に、成績の優秀な人に「どうやって勉強しているか」を漠然と聞くことも実は危険を含んでいます。なぜなら、自分が勉強できるようになった理由を他人に因数分解して説明できないことがあるからです。
成績優秀な人が「この問題集を10回解いたら、できるようになったよ」と話していたとしても、問題集を10回解いたという手段が本質ではありません。その問題集を10回解く過程で、きちんと理解ができ、きちんと暗記ができ、初見の問題に対応できる力が身についたから、できるようになったのです。
その理解の仕方や暗記の仕方、初見の問題への対応力のところまでを具体的に説明できる人はそう多くありません。だから、こういう話の多くは、手段に着目したアドバイスになりがちなのです。
手段のアドバイスは、効果を生み出すための再現性が高くありません。勉強では、理解と暗記という要素が欠かせないので、その力が養えなければ、すべての結果は偶然の産物である可能性が高いのです。
勉強はできたのに、仕事はできない人
時折、勉強では優秀だったのに仕事では結果が出せない人がいますが、それはたまたま勉強ではうまくいった可能性が高いです。
仕事ではさまざまな要因が絡み合います。たとえば、対人スキル1つを挙げても、「どうしたら良好な人間関係が築けるか」を戦略的に考えられず、うまくチームプレーができないといったこともありえます。
また、勉強では自分の持ち時間のうち90%の時間を使って目標を達成できていたとしても、仕事では自分の持ち時間に対して5 倍も10倍も、それ以上にもやることはあります。どうやっても、自分の持ち時間でやりたいことが終わるわけがありません。
だから、「限られた時間の中で優先順位を付けて、何をやると決め、何をやらないと決めるか」を、環境や周りのメンバーの個性なども考えて判断していかなければならないのです。
そうした選択が必要な時にいきなり「10の持ち時間で100の仕事をこなせ」と言われると、完璧主義者であればあるほどパニックに陥ってしまいます。その結果、目の前の10までは完璧に仕上げて、残り90の仕事はギブアップする可能性もありえます。
それが「勉強はできたかもしれないけど仕事はできない人」といった評価につながってしまう一因です。
うまくいかない理由には共通点が2つあります。1つは戦略の立て方が間違っていること。もう1つが再現性がないやり方をしていることです。さらに言えば、プライドが高い人は、そういった状況の時に「どうして自分が評価されないんだ」と他責思考になって、悪循環に陥りがちです。
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