相続人が行方不明だと遺産分割ができない…
前回の続きです。
「戸籍謄本や住民票を取って調べても、相続人が見つからなかった」戸籍や住民票を調べて、さまざまな手を尽くしても行方不明の方の所在が見つからない場合もまれにあります。遺産分割協議はすべての相続人の合意が必要なので、相続人が行方不明だといつまでも遺産分割ができず、相続手続きがとまってしまい、相続人は困った事態になります。
この場合、「不在者財産管理人」選任の申立てという手続きをします。相続人に行方不明の方がいる場合、相続人のうち誰かが代表になり、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立てをします。
そして、裁判所が選任した不在者財産管理人は、行方不明者の財産を管理・保存することになります。家庭裁判所から許可を得れば、行方不明の方の遺産分割も行えます。佐藤さんのケースの場合でも、どうしても行方不明者が見つからない場合は、「不在者財産管理人」選任を受ければ遺産分割協議が行え、相続を終えることができます。不在者財産管理人選任の申立ては、弁護士などの専門家に依頼することもできます。
被相続人高齢化で増加する「代襲相続」とは?
被相続人の高齢化により、「代襲相続」が発生するケースが多くなっています。代襲相続の場合、相続手続きが複雑になりやすいのです。「代襲相続」とは、本来相続する人が先に亡くなっている場合に起きる相続です。
特に子供がいない「おひとり様」「おふたり様」の場合、父母は先に亡くなっており、第3順位の兄弟姉妹が相続することが多いのです。高齢で亡くなったのであれば、当然、その兄弟も高齢です。なかには、先に亡くなった方もいるでしょう。その場合、甥姪が代襲相続します。
高齢の方は兄弟も多く、代襲相続となると相続人が一気に増えていきます。さらには、佐藤さんの叔母のように夫の相続手続きをしないまま亡くなってしまうと、その方の相続も発生して、さらに相続人が増えていきます。
佐藤さんのお宅の場合、被相続人である叔母の兄弟姉妹が亡くなられていて、また叔母の夫側の兄弟姉妹も亡くなられているので、叔母側の姪甥が叔母の財産を、叔母の夫側の甥姪が夫の財産を代襲相続します。
このようなケースの場合、まったく面識がないもの同士が、被相続人の財産を相続することになります。ほとんど赤の他人ですので、誰かしらが「もっと他に財産があるはずだ」と言い出すことはよくある話です。
もともと複雑な相続が余計にこじれ、より面倒くさいものになり、余計な心労と費用が生じてしまいます。このような事態を防ぐためにも、子供がいない方は、生前に遺言を作成し、時間もお金も費やす無駄な相続紛争が起きないよう、事前準備をしておきましょう。