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「子供に財産を渡したくない」場合の対処方法

今回は、「子供に財産を渡したくない」場合の対処方法について解説します。※本連載は、弁護士・武内優宏氏の著書『おひとり様おふたり様 私たちの相続問題』(セブン&アイ出版)の中から一部を抜粋し、「おひとり様」の相続を巡るさまざまなトラブルを、具体的な事例を取り上げて解説します。

夫が亡くなり、息子の嫁の態度が急変・・・

case9

同居を解消した息子には、絶対に財産をあげたくない

 

●相談者:小林百合子(仮名74歳)

●被相続人(予定):本人

●相続人:長男

●相続財産:自宅不動産、預貯金

小林百合子さんは、3年前に夫が亡くなったときに、現在の自宅を一人息子と2分の1ずつ共有名義としました。

 

当時、息子の家族と同居していたので、遺産分割でもめることなく無事に相続を終えました。

 

夫が亡くなって1年くらいが経ったころ、息子の嫁が小林さんにきつく当たるようになり、次第に喧嘩をする回数も増えていきます。

 

夫が生きていたころは、食事の支度は嫁がすべてしてくれていたのですが、最近では、「子供の学校で役員をやっていて忙しいから、ご飯はご自分でやってください。私は、お義母さんのお手伝いさんじゃないんですから」などと、嫁は小林さんに言うそうです。

 

さすがに、何度となく失礼な物言いをする嫁に対して、頭に来た小林さんは、息子に「あなたのお嫁さん、お父さんが亡くなってから、随分と態度が違うんじゃない」と言いました。息子は「おふくろは、元気だし、暇なんだから自分ひとりでなんでもやれよ。こっちは、暇じゃないんだよ」と返してきました。

 

この言葉を聞いた小林さんは、息子家族との同居を解消しようと決め、最近自宅近くにアパートを借りてひとりで住んでいます。息子も嫁も、小林さんが一人暮らしを始めても、関心はないようで連絡もきません。

 

悔しい思いをされた小林さんは、「私が亡くなったとき、一人息子にはどうしても財産を遺したくない」という思いで相談にいらっしゃいました。

自分の自宅持分を売却し、手にした現金を使い切る!?

小林さんのケースは、私のもとへみえる高齢の方から、最近よく伺う相談です。

 

「子供の家族と一緒に住んでいるが母親(もしくは父親)が、子供の家族と折り合いが悪くなり、その結果、家から追い出されてアパートで一人暮らしを始めている」

 

近ごろの高齢者が抱える問題の一つとも言えます。このような場合、高齢者の「財産は絶対に子供に譲りたくない」という心情もよくわかります。

 

それでは、この場合の解決策はどうしたらいいのかをご説明しましょう。

 

小林さんは「子供に財産を譲りたくない」という明確な意思があります。この場合、まず、最初にやることは遺言書を作成することです。

 

「自分の全財産は、第三者の○○に遺贈する。長男には相続させないものとする」

 

このような内容の遺言書を書くことで亡くなったあとも、小林さんの意向を反映させることができます。しかしながら、遺言書を作成したとしても、子供には遺留分があります。

 

小林さんのケースですと自宅の土地を共有名義にしているので、生きている間に、共有物分割という手続きをして、共有を解消してしまうというのも手です。共有物の分割には、財産評価をし適正価格で息子に買い取ってもらう(代償分割)、第三者に売却をして売却代金を分ける(換価分割)、土地を分筆してそれぞれの単独所有とする(現物分割)など、いろいろな方法がありますが、いずれにしても小林さんの共有分を現金化してしまうことがよいでしょう。

 

そして、なによりも子供に相続させたくない場合、売却した現金を、生きているうちになるべくたくさん使ってしまうことをおすすめします。先ほども申し上げましたが、遺言書があっても子供には遺留分があります。それを考えると、遺った財産が少なければ少ないほど、子供が相続する財産も少なくなります。

 

生きているうちに現金を、災害被害にあわれた方たちへの義援金として寄附してしまうことや、お世話になった方へ贈与することもできます。ただ、贈与の場合、相手方の贈与税を考慮する必要もあります。

 

一方、このようにもめた場合は、小林さんが亡くなったあと、家族が葬儀などの手続きをしない場合もあります。

 

これを機に、自分の葬儀についても、考えたほうがいいかもしれません。ケース2でも述べましたが、自分の葬儀について事前に決めておきたい場合は、遺言において祭祀継承者を指定したうえで、葬儀の手配などを「遺言執行者」に依頼しておきます。このような準備をしておけば、たいていはご自身の希望どおりの葬儀を実現することができます。

法律事務所アルシエン 弁護士

1980年、東京都に生まれる。早稲田大学政治経済学部卒業。2007年弁護士登録後、2011年に法律事務所アルシエン開設。遺言・相続に関する案件や葬儀社の法律顧問業務など、「終活」に関わる法的問題を多く扱っている。また、遺言・相続セミナーなど講演も多数行っている。特に「おひとりさま」からの法律相談、孤独死した方の遺族からの相談に精力的に取り組んでいる。

著者紹介

連載トラブル実例から学ぶ「おひとりさま」の相続対策

本連載は、2015年3月1日刊行の書籍『おひとり様おふたり様 私たちの相続問題』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

 

おひとり様おふたり様 私たちの相続問題

おひとり様おふたり様 私たちの相続問題

武内 優宏

セブン&アイ出版

「自分が死んだあと、親族に迷惑は掛けたくない」。高齢者のおひとり様の相談では、口をそろえて皆さんがおっしゃいます。その不安を取り除くには、法律の知識を用いてさまざまな対策を考えて、実行していくしかありません。兄…

 

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