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夫の死後、同居している姑に「出て行け」と言われた時の対処法

今回は、夫の死後に同居している姑に「出て行け」と言われた時の対処法について見ていきます。※本連載は、弁護士・武内優宏氏の著書『おひとり様おふたり様 私たちの相続問題』(セブン&アイ出版)の中から一部を抜粋し、「おひとり様」の相続を巡るさまざまなトラブルを、具体的な事例を取り上げて解説します。

「所詮、他人だから出て行ってくれ」

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夫が亡くなった瞬間、同居していた姑が嫁を追い出そうとする

 

●相談者:山本紀美子(仮名52歳)

●被相続人:夫

●相続人:妻、長男、長女(前妻との子供)

●相続財産:自宅不動産、預貯金

山本紀美子さんは、会社員の夫と職場結婚をしました。

 

夫は再婚で、前妻との間に、現在独立している子供が2人おり、山本さんとの間には子供はいません。山本さんは40歳のときに体調を崩して勤めていた会社を辞め、それからは夫婦ふたりで郊外に買った家に高齢になる夫の両親を呼び寄せて同居を始め、現在、専業主婦をしています。夫の両親とは、10年以上同居していますが、これといったもめごとも起きていません。

 

そんな、つつがなく暮らしていたある日、夫が交通事故に巻き込まれ亡くなってしまいました。

 

四十九日法要を終えた日、山本さんは姑の部屋に呼び出されます。部屋に行くと、舅、夫の兄弟、前妻の子供たちが揃ったなかで、姑は山本さんにこう言いました。

 

「私たちは血のつながった孫と一緒に住むから出て行ってくれ。あんたは再婚するかもしれない。所詮、他人だから」

 

山本さんは「夫が亡くなると、すぐに姑が追い出そうとしてきて……。でも、ここは、私たちが買った家です。どうしたらいいのでしょうか?」と困惑気味にご相談にいらっしゃいました。

「子供がいない夫婦」は必ず遺言書をのこすべき

「夫が亡くなっても、今までどおり夫の両親と平穏に暮らしていこう」

 

そう思っていた山本さんですが、現実は姑に、「前妻との間の子供(孫)たちと住むから出て行け」「あんたは、いつ再婚するかわからない」などと言われてしまいます。夫の両親は、現在80歳を超えているそうです。姑のこれらの言葉から、山本さんと夫の両親との間に亀裂が生じているのは一目瞭然です。

 

とはいえ、夫が生きていたころは関係が良好だったにもかかわらず、なぜ、突然気持ちが変わったのか。こういうことは、私が見てきたケースで多いのですが、相続権のない親族の余計なひと言によって引き起こされたというものです。

 

例えば、姑が「30代になる孫に面倒をみてもらったほうがいい」と考えたのにも、夫の兄弟が両親に、「他人と暮らすよりも血のつながった孫と暮らしたほうがいいよ」などと、両親の面倒を押し付ける意図の余計なひと言を言ったことが、原因になる場合もあるのです。

 

山本さんのケースをみても、明らかに、夫側が家族ぐるみで山本さんを追い出そうとしていることが推測できます。もっとも、夫の両親は山本さんの家の不動産の権利を持っていません。それにもかかわらず、なぜ、山本さん夫妻が買った持ち家から、山本さんを追い出そうとしているのでしょうか。

 

それは、前妻との間の子供にも相続権が認められるからです。つまり、夫の財産は、山本さんに2分の1、前妻との間の子供に2分の1(長男4分の1、長女4分の1)と分けることになります。

 

義父母は、血のつながった孫に相続分があるので、孫と結託して、山本さんを追い出そうとしているのです。また、いくら相続分がないとはいえ、実際に同居している義父母にも居住権はありますので、山本さんが義父母を追い出すということは法的には難しいのです。そうすると、義父母ふたりからから毎日のように「出て行け」と言われてしまうと、精神的に参ってしまい出て行かざるをえなくなってしまうのは山本さんのほうなのです。

 

このケースの場合、解決策としては、山本さんは夫の前妻の子供たちに、財産評価で査定した額の2分の1のお金を代償金として支払ってもらうことになります。ただ、夫との思い出の詰まった自宅は手放さなくてはならなくなってしまいますので、解決とは言えないような結末です。

 

もし、夫が生前に遺言書を書いていたら、こんな悲しいもめごとは起きませんでした。夫婦ふたりの場合、結婚したら自筆証書でもいいので、必ず遺言書を書きましょう。

 

子供がいない場合は必ずです。そうしないと、ふたりで築いた財産も、思い出も、相続紛争によって壊されてしまうことがあるからです。結婚したときは、子供がいないことが多いかと思います。私自身も結婚したときに初めて遺言書を書きました。それは、私に万が一のことがあったとき、妻が私の両親と遺産分割協議をして、余計な気苦労を抱えるのを防ぐためです。

 

トラブルにならなくても、妻が舅姑と遺産分割協議をするということは嫌なものだと思います。配偶者とは愛し合って結婚するのですから、そのくらいの配慮は当然のことだと思います。

法律事務所アルシエン 弁護士

1980年、東京都に生まれる。早稲田大学政治経済学部卒業。2007年弁護士登録後、2011年に法律事務所アルシエン開設。遺言・相続に関する案件や葬儀社の法律顧問業務など、「終活」に関わる法的問題を多く扱っている。また、遺言・相続セミナーなど講演も多数行っている。特に「おひとりさま」からの法律相談、孤独死した方の遺族からの相談に精力的に取り組んでいる。

著者紹介

連載トラブル実例から学ぶ「おひとりさま」の相続対策

本連載は、2015年3月1日刊行の書籍『おひとり様おふたり様 私たちの相続問題』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

 

おひとり様おふたり様 私たちの相続問題

おひとり様おふたり様 私たちの相続問題

武内 優宏

セブン&アイ出版

「自分が死んだあと、親族に迷惑は掛けたくない」。高齢者のおひとり様の相談では、口をそろえて皆さんがおっしゃいます。その不安を取り除くには、法律の知識を用いてさまざまな対策を考えて、実行していくしかありません。兄…

 

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