目的が明確でないM&Aは時間の浪費
M&Aを行う場合、それが買いであれ売りであれ、目的がはっきりしなければスタートすることはできません。何のために何を買収したいのか、あるいはどんな理由で何を売却するのかを明確にすることによって対象も条件も決まり、それに従って行動することが目的達成の近道となります。
M&Aを自分自身で行うか、それとも仲介会社に委託するか、いずれの場合でも条件がはっきりしなければ対象法人の発掘は困難で、たとえ情報が提供されても、適否を判断する物差し(条件)がないため、一から検討しなければならず時間がかかってしまいます。
一般に、よい案件ほどオークション形式で情報提供が行われる場合が多く、物差しのないまま情報の提供を受けても迅速な対応ができず他法人との競争に負け、みすみすチャンスを逃してしまい、結局は時間の浪費となってしまいます。反対に競合相手に釣られて、非常に高い金額で買収してしまうことも近年では稀ではありません。そして、仲介会社に委託している場合は費用だけがかさむことにもなりかねません。
時間のかけ過ぎは、決意を鈍らせチャンスを逃すことに
M&Aの交渉はそれが友好的であっても、常に順風満帆で進行するものではありません。事が重大なだけに慎重さを失ってはいけませんが、さりとて時間のかけ過ぎは問題です。
M&Aでは、双方がすべての面で100%満足が得られることはないだけに、ときどき不安や迷いも出てきます。特に、売り手の中小病院のオーナーは、自分が一生かかって育てた法人を売却する決断には、不安とともに相当の勇気が必要となることは想像に難くありません。それだけに、売り手は常に平常心でいられるわけではなく、自分(家族を含めて)や法人を取り巻く環境の変化には敏感に反応し、決意が鈍り心変わりをする懸念も出てきます。
買い手にとっても、売り手ほどの障害はないものの法人を取り巻く環境の変化(業界動向など)への対応によっては、条件を強化したり交渉を打ち切ったりする事態も起こり得るものです。M&Aは“縁のもの”ともいわれます。せっかくのチャンスを逃さないよう、決意したら迷わず迅速に対処することが大切です。
多様化したM&Aでは経験豊富な専門家が必要
最近では、病院のM&Aにおいても実情に即してその方法が多様化し、目的に応じて最適な手法を選択することができるようになりました。売り手、買い手それぞれの目的や条件を勘案し、双方がもっとも満足できる方法は何かを見つけることが重要です。
ただ、それぞれに短所、長所がありますし、法務、税務、会計などとの絡みも検討した上で、どの手法のどのようなスキームが当該案件にもっとも適切なのかを判断する必要があります。このように選択肢は知っていても、どれがベストかの判断はそう簡単なことではないので、やはり経験豊富な専門家の活用が必要となります。