※画像はイメージです/PIXTA

2024年4月1日から相続登記が義務化されますが、そもそも相続した不動産が登記されておらず相続人が分からない……というケースは珍しくありません。このような土地を「所有者不明土地」といいますが、まずは相続人を確定させることが第一歩。そこで相続人を探す「相続人調査」の方法をみていきましょう。

「相続人調査」の方法…相続人の範囲を確定させるまで

所有者不明土地などを含め、遺産についての相続手続を行う前提として、現在の相続人(遺産分割協議の当事者)を調べる必要があります。その場合、被相続人の出生から死亡までの連続戸籍と相続人全員の現在戸籍等を取得して、相続人の範囲を確定させます。

 

どこまで戸籍を取得すべきかについては、相続人の順位や代襲相続の有無によって異なりますが、いずれにしても、直近の戸籍から一つ一つ遡り、転籍している場合には転籍前の戸籍をたどり、出生まで戸籍をつなげていくという、地道かつ着実な調査を行う必要があります。

 

さらに古い戸籍は、手書きの毛筆体で書かれていますので、相続人ご本人で記載文字を判読し、そこから次の戸籍を追っていく作業は、非常に大変です。そこで、相続人の範囲を間違いなく確定させるためには、弁護士等の専門家に相続人の範囲を確認してもらうのが確実かと思います。

 

相続人の範囲が確定した場合、その判明した相続人間で遺産分割協議を行うため、他の相続人に連絡をとる必要があります。もともと連絡先を知っていればいいのですが、戸籍を取得し初めてその存在を認識したという方の場合、連絡先を知っていることはまずないと思います。

 

そのような場合には、戸籍の附票という書類を役所で取得します。戸籍の附票には、現在の住民票上の住所が記録されています。そのため、戸籍の附票を取得すれば、相続人の現在の住民票上の住所が分かります。

 

住民票上の住所が分かったら、その住所に宛ててお手紙などを出し、遺産分割の協議を申し入れます。そして、遺産分割についての希望や意見があるかを確認します。通常は、書面や電話等で回答を依頼することが多いですが、直接会って話合いを進める場合もあります。

 

このようにして相続人に辿りついた場合は、通常の遺産分割と同様、まずは遺産分割協議を行い、協議が調わなければ家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、調停も不成立となった場合は遺産分割審判により、解決を図っていくことになります。

「時効取得ができる」場合とは?

なお、ある不動産について、所有の意思をもって平穏かつ公然に10年間又は20年間占有すると、その不動産を時効取得することができます(民法162条参照)。

 

所有者不明土地の場合、隣地の所有者が、所有者不明土地までも含め一体として自己の所有地と認識し、所有者として使用収益し、不動産の管理も行い、さらに固定資産税も納付するなどしている場合があります。そのような場合には、隣地の所有者が、所有者不明土地を時効取得できることがあります。もっとも、時効取得を原因とする所有権移転登記は、所有者不明土地の相続人全員の協力がなければ実現できません。

 

また、判決に基づき単独申請で時効取得を原因とする所有権移転登記を行う場合にも、所有者不明土地の相続人全員に対する判決を得ないと、所有権移転登記を行うことはできません。

 

Point.1…所有者不明土地問題は社会問題化している

Point.2…相続人調査は地道かつ着実な戸籍の収集作業が必要

Point.3…相続人の連絡先が分からない場合、戸籍の附票を取得して、住民票上の住所を調べる

 

多大な手間と時間を要する相続人探し…専門家への依頼がベスト

事例のケースで、何代も前から名義変更されていない不動産の問題を解決するためには、まず相続人が35名であることを戸籍等から確認し、連絡先の分からない相続人については戸籍の附票を取得し、現在の住所を調査する必要があります。

 

そのうえで、各相続人に対し、遺産分割協議の申し入れをして、遺産分割を進めていかざるを得ないと思います。

 

多大な手間と時間がかかることは予想されますが、一歩一歩、着実に進めていく必要がありますので、事例のようなケースでは、相続人調査から遺産分割協議まで、まとめて弁護士等の専門家に依頼されることをおススメします。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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