養育費は増額できる?
一度取り決めた養育費を、あとから増額することはできるのでしょうか? まずは、養育費とはどのようなものかご説明します。
そもそも「養育費」とは?
養育費とは、簡単にいえば離婚したあとの子どもの生活費のことをいいます。
そもそも、民法は両親に子どもを扶養する義務を定めています(民法877条1項、820条)。離婚をしたからといって、この義務がなくなるわけではありません。
夫婦は互いに他人となり、それぞれの生活の面倒をみる必要はないですが、親と子どもの関係は変わりません。そのため、離婚して子どもと別居したとしても、親として子どもの生活にかかるお金は支払う必要があるのです。
平成24年より施行された改正後の民法766条1項でも、離婚する際に決める必要がある事項として「子の監護に要する費用の分担」(養育費の分担)が明示されています。
具体的には、両親のどちらかが親権・監護権を得て同居することになった場合、離れて暮らす別居親が養育費を渡すという形式になります。
養育費の金額を取り決める際によくあるトラブル
養育費の金額を取り決める際、取り決めの障害となる事項や後のトラブルの原因となる主な事項は次のとおりです。
■「適正額」の判断が困難
必要な額の養育費を、適正に算定することは容易ではありません。一般的には、後ほど解説する算定表を参考とすることが多いですが、実際にかかる養育費は居住地域や子の進学先などによって大きく異なるためです。
■相手と冷静に話し合うことが難しい
養育費について話し合うとしても、離婚前後に相手と冷静に話し合うことは容易ではありません。一刻も早く離婚をすることを優先し、養育費を取り決めなかったり相手が提示した養育費の金額そのままに合意をしてしまったりする場合も少なくないでしょう。
■取り決め時に書面を残していない
養育費について取り決めたにもかかわらず、口頭の合意のみで書面に残さない場合もあります。口頭であっても取り決め自体は有効ですが、あとから、相手に「そのような合意はしていない」などと主張されてしまう可能性があるでしょう。
養育費の相場は「養育算定表」が基準となる
養育費に含まれるものとしては、一般的に衣食住に必要な費用、教育費や医療費と解されています。親の子に対する扶養義務は、自分と同じ水準の生活を保障するという生活保持義務といえます。
裁判所が養育費を決定する場合、金額の算定は一般的に「養育費の算定表」を基準とします(令和元年12月23日に改訂されました)。
実際の養育費の金額ですが、離婚した父親からの養育費の平均月額(養育費の額が決まっている世帯)は4万3,707円、他方、離婚した母親からの養育費の平均月額(同)は3万2,550円となっています(平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果)。
養育費を増額の判断基準
養育費を増額するための判断基準は、原則として次の3つです。
・合意した時点で、事情の変化の予測ができなかったこと
・増額の必要性があること
たとえば、次の場合にはこれらの条件を満たし、増額が認められる可能性が高いでしょう。
■子どもの進学等による教育費の増加
子が進学したことや、当初の予定よりも学費の高い学校へ進学することなどによって多くの費用が必要となった場合には、養育費の増額請求が認められる可能性があります。
■子どもの医療費が必要な場合
子が病気になるなどして多額の医療費が必要となった場合には、養育費の増額請求が認められる可能性が高いでしょう。
■受け取る側の収入が減少した場合
養育費を受け取る側の収入がやむを得ない事情により大幅に減った場合には、養育費の増額請求が認められる可能性があります。
■支払う側の収入が増加した場合
養育費を支払う側の収入が大幅に増えた場合には、養育費の増額請求が認められる可能性があります。
どのくらい増額できる?
増額後の養育費の金額は、原則として裁判所が公表する算定表が参考になります。
事情変化後の収入を表に当てはめて、新たな相場を確認しましょう。ただし、後述するとおり、養育費算定表は、私立学校の学費が考慮されておりませんので、増額の見込額をより正確に知りたい場合は、弁護士に個別に相談することをおすすめします。
なお、調停や審判で養育費を決める際にはこの算定表を基準にしつつ、ほかの事情も考慮して総合的に判断されます。
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