相手から返答がないときはどうすべき?
弁護士の名前で支払請求の書面を送っても返答がない場合もあります。この場合は、訴訟提起を行うなど、法的措置を講ずることを検討する必要があります。
管轄の裁判所に対して訴訟を提起すると、裁判所から相手に対して訴状等の書類が送られます。書類を受け取った相手がこれを無視して裁判所に出頭しない場合は、請求者が主張する事実を自白したものとみなされ、勝訴判決が出ることになります。勝訴判決を得ても相手が任意に支払を行わない場合がありますが、この場合は強制執行により、相手の財産を差押えて回収を図ることになります。
このような訴訟提起の方法のほかにも、支払督促を申し立てるという方法もあります。この手続では、相手から異議がでなければ判決と同様の法的効力が生じ、書類だけの簡易な手続で行われるため、裁判所に出向いたり、証拠を提出したりする必要もありませんので、弁護士費用が懸念される場合は、弁護士に依頼せずこの手続を利用するのも選択肢の1つです。
また、相手が期限までに支払を行わないということは、何らかの理由で資金繰りに窮している可能性もありますので、事前に相手の財産を仮差押えするなど、民事保全手続等を検討する必要もあります。破産されてしまうと回収が困難になる可能性もありますので、回収が難航した場合は、早めに弁護士に相談する必要があります。
延滞金の請求はできる?
期限までに支払がなされない場合は、元金に対して遅延損害金(延滞金)を請求することができます。契約書などでその利率について定めている場合は、これに従って延滞金の額を計算します。契約書などで規定している場合は、年14.6%の利率が定められているのを多く見かけます。
なお、事業者と消費者の間で締結された金銭消費貸借以外の契約において、遅延損害金の利率を定める場合、その上限は14.6%とされており、これを超える部分は無効となります(消費者契約法9条2号)。
仮に、契約書などには特に定めがない場合でも、遅延損害金(延滞金)を請求することは可能です。その場合は、民法所定の利率である年3%で遅延損害金を計算することになります。2020年に民法が改正される以前は、一般の取引に対しては年5%の民事法定利率が適用され、商行為によって生じた債務には年6%の商事法定利率が別途適用されていましたが、民法改正の際に商事法定利率の規定は削除され、法定利率は一律に年3%となりました。
なお、遅延損害金は、「延滞利息」や「手数料」と言ったりもしますが、遅延した場合に生じるものはすべて同じものを意味しています。他方で、「利息」というのは、通常は金銭を借りてから返すまでの間に発生するものを意味し、返済遅延の有無にかかわらず発生するものです。
熊本 健人
弁護士
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