(※写真はイメージです/PIXTA)

軍部の政治介入が進み、日本は日中戦争に突入します。国民の生活を巻き込んだ「国家総動員法」の発令まで、政治経済はどのように展開されていったのでしょうか。著者『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)より、有名予備校講師の山中裕典氏が、1930年から1940年代にかけての社会情勢について解説します。

日中戦争はどのようにはじまったのか

日本では、陸軍の〔林銑十郎内閣〕を経て、貴族院議長(もと摂関家の近衛家)の〔第1次近衛文麿内閣〕が成立しました。

 

そして、北京郊外で日中両軍が衝突する盧溝橋事件(1937.7)が発生し、第2次上海事変も起こって日中戦争(1937~45)が拡大すると、中国では第2次国共合作が成立して抗日民族統一戦線が形成され、宣戦布告もないまま長期戦となり(日本はこれを「支那事変」と呼称)、日本軍は首都南京を占領しました(南京事件も発生)。

 

しかし、国民政府は内陸部の重慶に移り、東南アジアからの援蔣ルートを通じたアメリカ・イギリスの物資援助を受けながら、抗戦を続けました。

 

日中戦争に関連した外交の進行について

出所:『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)より抜粋
[図表3]日中戦争の展開 出所:『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)より抜粋

 

1938年、日本は近衛声明を発表し、各地に親日政権を作って和平を達成する方針に転換しました。第1次近衛声明では「国民政府を対手とせず」と表明し、蔣介石の国民政府との和平交渉を日本側から閉ざしました

 

第2次近衛声明では「日本・満州・中国の連帯と東亜新秩序の建設」を掲げ、今さらながら戦争目的を表明しました。

 

のち、国民政府要人で親日派の汪兆銘が重慶を脱出し、日本の保護下で南京に新国民政府を樹立しましたが(1940)、政権としては弱体で、日本の和平工作は停滞しました。

 

自由な思想は禁止された

文部省は『国体の本義』を作成し、神話をもとに国体の尊厳と天皇の神格性(「現御神」)を説き、国民精神を高めようとしました。日中戦争の開戦後、自由主義や社会主義への弾圧が一層強化されました。

 

矢内原忠雄は政府の大陸政策を批判して、東京帝大を追われました。人民戦線事件では、反ファシズム団体の結成を計画したとして、日本無産党の指導者やマルクス主義経済学者の大内兵衛らが検挙されました(共産党員でなくても治安維持法を適用)。

 

また、火野葦平麦と兵隊』など従軍経験による戦争文学が登場しましたが、石川達三『生きてゐる兵隊』は発禁処分になりました。

 

日中戦争開始後の国民の経済活動について

〔第1次近衛内閣〕は「挙国一致」などのスローガンを掲げて国民精神総動員運動を推進し(1937~)、戦争協力を求めました。さらに、職場ごとに産業報国会を結成させ、労資一体を促進しました。また、軍事費を急増させるとともに、内閣直属の企画院を設置して経済統制を強めました。

 

さらに、国家総動員法(1938)で、政府は議会の承認なしに勅令を発して労働力や物資を統制する権限を得ました。議会が立法権の一部を政府へ譲り(授権立法)、議会の審議が形骸化したのです。のち、軍需産業へ動員する国民徴用令や公定価格を定める価格等統制令が出されました(1939)。

 

一方、軍需優先のなかで民需が制限され、「ぜいたくは敵だ」のスローガンのもと、日用品の切符制(事前配布の切符を添えて購入)、米の配給制(購入量の一定制限)、生産者への供出制(強制買上げ)が実施されました。

 

 

山中 裕典

河合塾/東進ハイスクール・東進衛星予備校

講師

 

2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>

 

注目のセミナー情報

​​【税金】11月27日(水)開催
~来年の手取り収入を増やす方法~
「富裕層を熟知した税理士」が考案する
2025年に向けて今やるべき『節税』×『資産形成』

 

【海外不動産】11月27日(水)開催
10年間「年10%」の利回り保証
Wyndham最上位クラス「DOLCE」第一期募集開始!

 

​​【事業投資】11月28日(木)開催
故障・老朽化・発電効率低下…放置している太陽光発電所をどうする!?
オムロンの手厚いサポート&最新機種の導入《投資利回り10%》継続を実現!
最後まで取りつくす《残FIT期間》収益最大化計画

2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

※本連載は、山中裕典氏による著書『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

大人の教養 面白いほどわかる日本史

大人の教養 面白いほどわかる日本史

山中 裕典

KADOKAWA

累計400万人の受験生が学んだ大学受験日本史の参考書が、大人の学び直し用に生まれ変わりました! 有名人物や出来事、制度の名前など、ぼんやり覚えている日本史の知識が繋がる! “年代”と“流れ”が頭に残りやすく全体…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録