(※写真はイメージです/PIXTA)

夫婦ともに元教員のA夫妻。80歳を超え、月36万円の年金暮らしをしています。生活に支障はなく、なに不自由ないセカンドライフに見えますが、2人には実家で暮らす無職のひとり息子、Cさん(50歳)がいたのでした……。今後の生活が不安になり相談に訪れたA夫妻に、牧野FP事務所の牧野寿和CFPはどのような助言を行ったのでしょうか、みていきます。

Cさんを養うため、月36万円の年金を“ほぼ使い切る”生活

筆者はまず、A夫妻に現在の家計収支を伺いました。

 

A夫妻の現在の収入は、主に年金です。老齢厚生年金を月額約36万円受け取っていますが、毎月ほぼ全額を使い切っています。

 

その内訳は、11万円近くがCさんの国民年金と国民健康保険、介護保険料、食費や小遣いです。残りの約25万円が2人の生活費ですが、いまのところは貯蓄を取り崩すことなく生活ができています。

筆者が引っかかった「2つ」の懸念点

筆者は2人から一連の話を伺うなかで、次の2点が気にかかりました。

 

1.夫婦のうちどちらかが亡くなると、貯蓄を取り崩す生活になる

2.両親の相続対策

 

1.夫婦のうちどちらかが亡くなると、貯蓄を取り崩す生活になる 

夫婦のどちらか亡くなった場合、年金受給額は[図表1]のようになります。

 

出所:筆者が作成
[図表1]A夫妻の老齢厚生年金とどちらかが亡くなった場合の年金見込額 出所:筆者が作成
※遺族厚生年金は、自身の老齢厚生年金の受給額より配偶者の老齢厚生年金が多い場合に、所定の差額分が遺族厚生年金として受給できる。したがって、Bさんは遺族厚生年金を受給することができるが、Aさんはできない。詳細は日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」を参照のこと。

 

Cさん関連の毎月約11万円の出費は、あくまで夫婦2人の年金収入を前提として可能となっています。2人とも80代と高齢になっていますから、万が一夫婦のどちらかが亡くなると、いまのままでは親の貯蓄を取り崩さなければ生活が成り立ちません。

 

2.両親の相続対策

また、夫婦の現在の資産は[図表2]のとおりです。

 

出所:筆者が作成
[図表2]A夫妻の資産額とその内訳 出所:筆者が作成

 

現在、夫婦の資産は約9,200万円あります。両親が亡くなったあと、ひとり息子のCさんがこの資産額をそのまま相続すれば、相続税の基礎控除額3,600万円を差し引いた5,600万円が相続税の課税対象額になります。

※ 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

 

そこで、Cさんがとっておきたい相続対策としては、「事前に両親の資産額を減らすこと」が挙げられます。とはいえ、現在健康なA夫妻も、年を重ねるにつれて、病気や介護のリスクが高まり出費が増える可能性があります。また、無職のCさんにとって、相続のためといって夫婦の資産を減らすのは躊躇されるところです。

 

そうはいっても、夫婦はともに80代ですから、相続の対策をする年齢には違いありません。

 

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※プライバシー保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。

<参照>
・日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」
(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html)

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