元本割れのリスクも…〈教育費〉や〈住宅購入〉の資金のために「新NISA」を活用する人が必ず知っておきたい「運用期間」の最適解【日経新聞記者が解説】

元本割れのリスクも…〈教育費〉や〈住宅購入〉の資金のために「新NISA」を活用する人が必ず知っておきたい「運用期間」の最適解【日経新聞記者が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「教育・住宅資金」「車の購入」「リフォーム資金」といった特定の目的の支出に備えるために新NISAを始める人も少なくありません。しかし、「支出までの期間が短くなってから、新NISAで準備を始めるのはリスクが大きい」と、証券アナリスト(CMA)資格も持つ日本経済新聞編集委員、田村正之氏はいいます。田村氏の著書『間違いだらけの新NISA・イデコ活用術』より、詳しく見ていきましょう。

「バランス型運用」なら短期でも元本割れの確率は少なめ

それでは株や債券を組み合わせるバランス型投資信託は、教育・住宅資金づくりに有効でしょうか。債券を組み込んだ分だけ値動きが小さくなるので、比較的短い運用期間においては元本割れを防ぎやすくなります。

 

例えば、①年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)運用と同じように国内株、国内債券、日本を除く全世界株、外国債券を4分の1ずつ、②外国債券と「日本を除く全世界株投信」を半分ずつ―という2つのパターンで積み立て投資を続けていればどうなるでしょう。少し難しいのですが、モンテカルロシミュレーションという推計方法で計算すると、運用期間10年の場合、①、②ともに元本割れ確率が6%前後と、全世界株100%(元本割れ確率の実績8%)に比べやや低下する結果になりました。

 

4資産分散の低コストの投信としては「〈購入・換金手数料なし〉ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)」があります。信託報酬は年0.15%、総経費率は年0.17%です。外債投信で低コストのものとしては「eMAXIS Slim先進国債券インデックス」(信託報酬0.154%、総経費率0.177%)などがあります。

 

ちなみに外債は少し前までは世界的な超低金利のため持つ意味がありませんでしたが、約半分を占める米国の金利上昇により2023年10月時点の利回りは年4%となっており、金利の面からは資産の一部で持つことを検討してもいい水準になっています。

 

ただし、外債は2023年秋時点の円安水準から始めるのはそれなりに大きな為替リスクがありますし、国内債も通常の投信で買う場合は目先の金利上昇(価格下落)が心配です。

 

筆者としては全世界株のリスクを引き下げたい場合は、当面はバランス型の投信を買うより、金利上昇時でも価格が下がらない個人向け国債変動10年型と組み合わせる方がお勧めではあります。全世界株と半分ずつ持つ場合、下落したときの下落率は、資産全体で考えれば、世界株だけのほぼ半分ですみ、預貯金などで補いやすくなります。個人向け国債はNISA対象外ですが、資産配分はNISAやイデコ、課税口座を含めた資産全体で考えるべきです。

NISAで教育資金を備える注意点

実際にNISAで教育資金を貯める注意点について先ほどもお話ししましたが、大事なので繰り返します。ひとつは生活費の半年~1年程度とされる生活防衛資金のほかに、元本割れしたときにNISA資金を使わなくてすむよう、預貯金をなるべく多く用意しておく必要性です。例えば、世界株では15年の積み立てでも、集計した全404期間のうち元本割れだった期間は19期間(5%)あり、最も成績の悪かった2009年2月までの15年では、資産は累計投資額に比べ2割の損失でした。

 

逆に言えば、生活防衛資金以外で教育資金などに備える預貯金を別途用意できる場合は、もし運用がうまくいかなければその預貯金を使えばいいので、それ以外のお金は世界株100%で思い切って運用してよいことになります。

 

もうひとつのポイントは、利益確定です。長期の運用期間がとれる老後資金づくりなら、積み立て投資の継続が大原則です。しかし教育・住宅資金のように支出目標額が決まっている場合は支出額の確保が大事なので、利益確定も選択肢になると考えられます。支出時期の4~5年前以内になったとき運用が好調で目標額に達していれば、利益を確定し預貯金に替えておくことも検討材料になるでしょう。

 

 

田村 正之

日本経済新聞社

編集委員

 

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※本連載は、田村正之氏による著書『間違いだらけの新NISA・イデコ活用術』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

間違いだらけの新NISA・イデコ活用術

間違いだらけの新NISA・イデコ活用術

田村 正之

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