専業主婦、手取り600万円・50歳会社員夫の「まさかの老後資金シミュレート」に衝撃…不足金額を〈新NISA〉で埋めることは可能か【公認会計士が指南】

専業主婦、手取り600万円・50歳会社員夫の「まさかの老後資金シミュレート」に衝撃…不足金額を〈新NISA〉で埋めることは可能か【公認会計士が指南】
(画像はイメージです/PIXTA)

新NISA制度がスタートし、多くの人が投資をスタートする一方、中高年層の方々はどのような買い方をすればいいのか、頭を痛めているのではないでしょうか。今回は、中高年が新NISAを活用して老後資金を準備する場合のシミュレーションについて、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

老後資金に悩む中高年は、金融機関の「いいカモ」

先生:いよいよ新しいNISAが始まりましたね。年間360万円、総額で1,800万円まで非課税で投資が可能となるなど、メリットはとても大きいですよ。

 

生徒:うちは会社員と専業主婦の組み合わせで、夫婦ともに50歳です。いまから老後資金を準備するために、毎月いくら投資に回せばいいのでしょうか?

 

先生:老後の生活への備えとして、現役時代にNISAの投資枠1,800万円を使い切ることは不可欠でしょう。毎月いくら買うかという問題についても、自分で決めておかないといけません。多くの人が、現実を見ずに成り行き任せで現役時代を過ごし、一方で、貧乏な年金生活に恐怖するという、経済的にも精神的にも不健全な状態にありますから。

 

生徒:先日、銀行の営業担当の方から「老後資金の準備のためにはファンドラップが最適ですよ」とアドバイスされましたが、ファンドラップはどうでしょう?

 

先生:銀行や証券会社にとって、老後を不安に思っているお客様は「いいカモ」なのです。不安をあおれば、リスクが大きく手数料が高いボッタクリの金融商品も買ってくれますから。ファンドラップや外貨建ての個人年金保険などは、銀行や証券会社が最も儲かる商品です。

 

生徒:うわぁ…。

 

先生:ですが、銀行窓口の担当者は、自分が販売を指示された商品がボッタクリだとは教えられていません。誠実な彼らは営業トークを一生懸命覚え、お客様へ真摯に説明します。そのためなのか、担当者の熱意にほだされて「ボッタクリ商品」を買ってしまうお客様も少なくないのですよ。

50歳の相談者、老後資金の必要額に愕然

生徒:そういえば銀行窓口で「老後の生活にいくら必要か?」「老後の生活費としていくらほしいか?」といったアンケートに回答しました。老後の生活費はいくら必要だと考えるべきでしょうか?

 

先生:生活費の金額は人それぞれですね。現役時代の稼ぎに基づいて計算される公的年金や、日常生活の過ごし方は人によって、異なるからです。

 

生徒:では、どうやって目安を立てたらいいのでしょう…。

 

先生:ここで一緒に計算してみましょうか。ご主人は会社員だと伺っていますが、手取り年収はおいくらですか?

 

生徒:手取りで毎月50万円、年間600万円くらいです。いま夫は50歳で、定年退職の65歳まで会社に勤める予定です。

 

先生:そうすると、65歳まで15年間働き、その後、95歳で亡くなると仮定した場合、30年間の老後生活を送ることになります。現在、どれくらい貯蓄されていますか?

 

生徒:会社の確定拠出年金で貯めていて、900万円くらいです。あとは生命保険が500万円です。

 

先生:「年金定期便」を見たことはありますか? 厚生年金の受け取りが開始したときの金額は把握されていますか?

 

生徒:しっかり見ています。いまのところ、毎月15万円、年間180万円の厚生年金をもらえる予定です。

 

15万円 × 12ヵ月 = 180万円

 

先生:なるほど、わかりました。老後の生活費はどれくらいほしいですか?

 

生徒:いまほどお金を使うことはないと思いますが、趣味や旅行にも十分なお金を使いたいですし、介護や医療費も不安ですから、毎月25万円くらいはほしいですよね…。

 

先生:そうなると、厚生年金15万円を受け取っても毎月10万円不足します。年間に120万円の不足が、30年間続くわけです。トータルで3,600万円の不足です。

 

15万円 - 25万円 = ▲10万円

 

▲10万円 × 12ヵ月 = ▲120万円

 

▲120万円 × 30年間 = 3,600万円

 

生徒:まだ900万円しか貯めていません。ぜんぜん足りませんね!

 

先生:それでも900万円の貯蓄があるのは合格ですよ。3,600万円から900万円を差し引くと、老後資金の不足は2,700万円。大丈夫です。

 

3,600万円 - 900万円 = 2,700万円

 

生徒:2,700万円もの不足、どうしたらいいのでしょうか…?

 

先生:これから新しいNISAでコツコツと投資を続けましょう。資産運用をものすごく保守的に考え、利回りゼロ%でまったく増えない投資だと仮定しましょう。その場合、退職までの15年間で2,700万円を準備できればよいのです。2,700万円を15年で割って毎年180万円です。新しいNISAでは、つみたて投資枠で120万円、成長投資枠で60万円の配分となります。毎月15万円ずつ毎月コツコツと投資信託を買っていけばよいでしょう。

 

2,700万円 ÷ 15年間 = 180万円

180万円 → (配分)つみたて投資枠120万円 + 成長投資枠60万円

180万円 ÷ 12ヵ月 = 15万円

 

生徒:いまでも手取り600万円しかないのに、そこから180万円をNISAの投資に回すとすれば、生活費が420万円になってしまいますね…。うちはムリかもしれません。

 

先生:安心してください。ご主人には退職金がありますよね。どれくらいもらえそうですか?

 

生徒:そうだ、退職金があります! 1,500万円くらいもらえると聞いています。

 

先生:そうなると、これから投資する金額は毎年80万円くらいですみますよ。毎月7万円ずつ投資すればよいでしょう。

 

1,200万円 ÷ 15年間 = 80万円

80万円 ÷ 12ヵ月 = 約7万円

 

生徒:それでも、将来の医療費や介護費用が増えてしまうことが心配です。老後資金はもっと必要になるのではないでしょうか? 退職金は、自分が病気になったときのために持っておきたいです。

 

先生:その場合、ご主人に現役期間を5年延ばしてもらい、70歳まで働くことも考えましょう。今後は高齢者の仕事も増えてきますよ。

 

生徒:そうですね! 私もパートをはじめようかな!

 

 

岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

 

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