選ぶ商品と投資する金額、どうやって決めればいい?
生徒:いよいよスタートした新NISA制度ですが、新NISAで初めて投資をするという方も多いと思います。選ぶ商品や投資する金額は、どのように決めればいいのでしょうか?
先生:選ぶ商品は、全世界株式を対象とするインデックス・ファンドが最適です。この商品で運用していれば、最も効率的にお金を増やすことができます。
生徒:金額はどうやって決めたらいいですか?
先生:投資すべき金額は、年代によって変わってきますが、手元に余っている資金があればその全額を投資すればいいでしょう。働いて稼いだ収入の一部を投資に充てようとする場合、無理のない金額を設定し、毎月同額をコツコツと投資し続けることをお勧めしますよ。
生徒:ちなみに、やってしまいがちな失敗などはありますか?
先生:よくあるのが、価格が下がったからといって短期で売却してしまうケースです。また逆に、価格が上がったことで短期売却するケースもあります。これでは長期分散投資による資産形成ができません。
預貯金や一般的な株式投資との違いは?
生徒:「投資」という分野に、まだ警戒感を抱く方もいると思います。新しいNISAは銀行預金や一般の株式投資と比較して、どのような違いやメリットがあるのでしょうか?
先生:新しいNISAは「配当や値上がりなどの利益が出て儲かっても、税金を支払わなくてよい」という特典を与えられている点が大きな違いです。大変ありがたいですね。また、資産運用において、利益は時間の経過とともに発生します。節税効果も同様です。長く運用するほど利益が大きくなり、節税額も大きくなります。NISAは老後資金を形成するために最適な制度だといえるでしょう。
換金するタイミングと投資するタイミングは、いつが適切か?
生徒:新しいNISAでは、非課税期間が無期限ということですが、投資した商品はどのようなタイミングで売却すべきでしょうか?
先生:売却のタイミングは「お金が必要になったとき」です。突然お金が必要になったら、そのときに売却してお金を引き出せばよいでしょう。老後に生活費が足りなくなったら、そのときに売却すればいいのです。値上がりしたから売る、値下がりしたから売るなどと考えてはいけません。
生徒:1人あたりの上限1,800万円ですが、こちらは早く埋めるほど得になるのでしょうか?
先生:1人あたりの上限1,800万円は、早く埋めるほど、節税効果を長く得られることになり、お得になります。節税効果は時間の経過によって発生するのです。
家族全員でNISAを活用する場合の「メリット」と「注意点」
生徒:夫婦で新NISAを始めた場合、非課税枠が合計3,600万円になり、18歳以上の子どもが2人いる4人家族なら、7,200万円に広がることになります。家族間でどのように投資を使い分ければいいのでしょうか?
先生:ご家族すべての方がNISA口座を開設して、できるかぎり大きな金額を投資に充てるといいでしょう。家族による使い分けはありません。投資しないと損だ、ぐらいに思ったほうがいいですよ。ただし、NISA口座に資産を持つ親が亡くなったら、相続財産となって相続税が課されます。せっかく所得税が非課税となったとしても、相続税は非課税になりません。
生徒:それは残念ですね…。
先生:相続税対策を考えるなら、親から子ども、または孫へ、暦年贈与の非課税枠である毎年110万円を贈与し、子どもまたは孫が自分のNISA口座を使って投資するとよいでしょう。
「つみたて投資枠」「成長投資枠」、資金配分はどうすれば?
生徒:新しいNISAは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」に分かれていますが、資金をどのように配分すべきでしょうか?
先生:つみたて投資枠と成長投資枠は、資産の置き場所にすぎません。最もよい商品を選び、それを両方の枠で買えばよいでしょう。配分などを考える必要性はまったくありません。
高齢者のNISA活用のポイント
生徒:ご高齢の方が新しいNISAを利用するメリットや注意点はありますか?
先生:資産家なのか、そうでないのかによって注意点は異なります。NISA口座を取り崩してお金を使う必要がない資産家の方々は、そのまま死ぬまでNISA口座で運用を続けるとよいでしょう。それに対し、資産家ではなく、NISA口座を取り崩して老後の生活費に充てる予定の方々は、目先3年分くらいの生活費は、NISA口座から銀行預金へ移しておくべきだといえます。
従来NISAに見る、資産形成の課題とは?
生徒:従来のNISAについて成果と課題をどのようにお考えでしょうか。今後さらに制度が普及する上で必要な制度改正などがあれば教えていただきたいです。
先生:新しいNISAと同じく、従来のNISAもとてもよい制度でしたが、日本人に対する金融経済教育が進まず、投資したいという人が進みませんでした。金融経済教育を強化する必要があります。
※ 本記事の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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