厳選された優秀企業への分散投資も叶う金融商品
「卵は一つのかごに盛るな」という投資格言もあるように、どんなに有望と思える企業でも、たった1社に全財産を投入してしまうと、その企業の業績が悪化するだけで大きな損失を抱えてしまうリスクがあります。
異なる値動きをする多数の銘柄に幅広く分散投資すれば、極端な話、1社が倒産して株価が0円まで値下がりしても、ほかの企業の頑張りで全体として見るとリスクを抑えた投資が可能になります。
かといって、個人投資家がたった一人で、100社や1,000社もの有望企業を独力で選んで、そのすべてに投資するのは情報面でも資金面でも不可能です。
そこで、ある国や地域、もしくは世界中から優秀な企業を厳選して、パッケージ化し、“丸ごと”投資できるように設計された金融商品がインデックスファンドです。
S&P500に連動するインデックスファンドなら、その1本を買うだけで、米国で超優秀とされる大型企業500社に投資できます。
「GAFAM」という略語で総称されるアップル、マイクロソフト、グーグルの親会社アルファベット、アマゾン・ドット・コム、フェイスブックの親会社メタ・プラットフォームズといった巨大IT企業も、S&P500の組み入れ銘柄です。
コカ・コーラ、マクドナルド、ジョンソン・エンド・ジョンソンなど、世界中の誰もが知っている米国の国際的な優良企業も名を連ねています。電気自動車のテスラや高速半導体のエヌビディアなど、ここ数年、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長している新興企業の株も入っています。S&P500に連動するインデックスファンドなら、多くのネット証券の場合、たった100円という少額資金から米国の超優良企業500社すべてに投資できます。
インデックスファンドにつみたて投資
新NISAの年間投資枠は360万円。生涯非課税投資枠の上限は1,800万円。少なくとも5年間かけて、つみたて投資しないと枠をすべて埋め切れません。
わざわざ、つみたて投資をしなければならないように、新NISAが制度設計されている理由は何でしょう。もちろん、少額資金での投資を大前提にしているのも理由の一つです。さらに、高値つかみをなるべく減らし、結果的に底値でたくさん買える「ドルコスト平均法」の効果が発揮されることを狙った面もあると思います。
図表2のケース①は、投資対象の投資信託の基準価額が最初の15年間、年率10%ずつ下落したあと、残り15年間、10%ずつ上昇した場合の300万円一括投資と、毎年10万円×30年間のつみたて投資の運用成績です。1年目に100だった投資信託の基準価額は、16年目には20.5まで下落したものの、31年目には86まで回復しました。
一括投資の場合、運用最終年の基準価額が1年目の基準価額を下回っていると運用は失敗し、資産は投資元本を割り込んでしまいます。
一方、定額つみたて投資の場合、下落して基準価額が安くなったところでたくさんの口数をつみたて購入できるので、30年間の平均購入単価が低下。運用の最終盤に基準価額が回復すれば、運用成績をプラスに持っていくことができます。
むろん、前にも見たように、投資信託の基準価額が30年間ずっと、年率10%ずつ上昇していった場合、一括投資のほうがはるかに大きく増えます(図表3のケース②)。S&P500や全世界株式に連動するインデックスファンドのようにずっと右肩上がりの上昇が続く金融商品に投資するときは断然、一括投資のほうが有利です。とはいえ、定額つみたて投資でも、かなり大きな利益を上げることができます。
つまり、「大勝ちは望めないものの、負けにくい」のが定額つみたて投資。
だからこそ、「損失が出ても泣き寝入りするしかない」という新NISAの唯一にして最大のデメリットを克服しやすく、投資初心者でも失敗しにくいといえるのです。
山口 貴大(ライオン兄さん)
株式会社バイアンドホールド
代表取締役社長
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