(※写真はイメージです/PIXTA)

今年も、国外における地政学リスクの上昇や中国経済の低迷など、金融市場には「不安要素」が存在します。では、この先行き不透明な金融市場で大切な資産を守るため、どのような投資行動が求められるのかでしょうか。フィデリティ・インスティテュート主席研究員でマクロストラテジストの重見吉徳氏が、今年注目しておきたい具体的な投資先とその理由について解説します。

分散投資の具体策②米国リート

[図表6]に示すとおり、【左】米国リートは平常時並みの評価値であるほか、【右】一部のリートは大きな価格上昇をみせています。

 

[図表6]米国リート指数のNAV倍率/データセンター・リートの価格指数
[図表6]米国リート指数のNAV倍率/データセンター・リートの価格指数

 

【左の図】でみている「NAV倍率」は、リート価格が「純資産金額」の何倍で取引されているかをみる、リート市場のバリュエーション指標です。

 

純資産金額とは、リートが保有する物件や現預金の評価額から、リートが抱える負債の金額を差し引いたものです。純資産金額は、保有不動産を現金化し、負債を完済したあとに残る金額であり、リートの「解散価値」に相当します。

 

リート価格の現在の評価値は、「弱気」にも「強気」にも傾いていない平常時並みの評価値で、投資を開始する・積み増すには、問題のないタイミングです。

 

【右の図】は、米国リートのうち、「データセンター」のリート指数をみています。データセンターは、企業にサーバーなどの情報通信機器を設置するためのスペースを提供するリートです。AI(人工知能)やビッグデータの活用などで需要が高まっています。リートへの投資も、成長分野や成長企業の選別が重要です。

分散投資の具体策③米国ハイ・イールド債券

[図表7]に示すとおり、米国ハイ・イールド債券市場は、【左】上乗せ金利が平常時並みに回復しているほか、【右】高い利回りが残る、希少な債券市場です。

 

[図表7]米国ハイ・イールド債券の上乗せ金利/米国債とドル建て社債の利回り比較
[図表7]米国ハイ・イールド債券の上乗せ金利/米国債とドル建て社債の利回り比較

 

【左の図】でみている、「米国ハイ・イールド債券の上乗せ金利」は、米国ハイ・イールド債券の利回りが、国債利回りよりもどれほど高い水準で取引されているかをみる、社債市場のバリュエーション指標です。信用力が改善する(悪化する)と、低い(高い)上乗せ金利で取引されます。

 

2022年からの利上げで信用力の悪化が懸念され、上乗せ金利は上昇しました。しかし、その後の景気拡大見通しや利上げ終了見通しにより、上乗せ金利は平常時並みに回復しています。

 

現在は、「弱気」にも「強気」にも傾いていない平常時並みの評価値で、投資を開始する・積み増すには、問題のないタイミングです。

 

【右の図】に示すとおり、利上げによって(資金調達金利に相当する)短期金利が高まるなか、米国ハイ・イールド債券は、短期金利を上回る希少な市場です。景気拡大が続けば、「利回り追求」の動きが生じる可能性があります。

 

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重見 吉徳

フィデリティ・インスティテュート

首席研究員/マクロストラテジスト

 

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