ついに観念した美術商。しかし…
すべてのペナルティーをかぶる覚悟で隠す「裏取引の相手」の情報
美術商は観念して、帳簿外取引を認めた。しかし、口座の残高だけで逃げ切るつもりらしい。
外国人女性名義の口座の金について、「お客から頼まれて東京から美術品を送り、代金を現金で回収したものです」と白状するものの、裏取引をした相手は絶対に明かさない。
購入者は脱税資金や相続税対策などの裏金で美術品を購入していると思われ、全貌を解明すると購入者自身の脱税を見つけ出す端緒になる取引なのだが、美術商はペナルティーをすべてかぶる覚悟だ。
現金で行う裏取引。しかも、美術品の仕入先も、仕入価格も、販売先も、販売価格も分からない。トクチョウ班とはいえ、しょせん税務署の調査部門であることを知っていて、マルサの強制調査がなければ大丈夫と高を括っているようだ。
そこでリョウチョウに通報して応援を求めたのだが、前向きな返事はない。マルサはこの規模の脱税では動かない。
解明の糸口も見つからず、脱税の舞台は海外にもおよんでいることが判明するが、限られた調査日数のなか、どんなに時間をかけても解明できないなら早急に収束しなければならない。
この事案にすべてをかけてのめり込むのか。それとも、ある程度の追徴額で折り合いをつけるのか。調査の終結には行政判断が必要だった。
結局、署の幹部と協議を重ね、外国人女性の口座に残るお金を裏取引の売上と判断し、所得税と消費税、ペナルティーとしての重加算税を含めて1億円近くの追徴税額を賦課した。
そして、すべてを明らかにしない美術商の青色申告の承認を取り消した。税務署の単独調査としては25年ぶりのことだ。国税局の審理担当は“青色申告は育てるもの”と言って、取り消しの上申に首を縦に振らなかったのだが、最終決定権は所轄の税務署長にある。
マルサの強制調査を恐れた美術商と、調査を継続しても時間の無駄と判断したトクチョウ班の折り合いで決着した追徴税額が、脱税額の30%なのか、50%なのか、あるいは70%なのかは分からない。
この後、青色申告は「育てる」から「是々非々」へと舵を切る。そのきっかけになった事案だ。
上田 二郎
元国税査察官/税理士
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