点数に取り憑かれた現代社会
基本的すぎる質問だと思いつつ、優斗は思い切って聞いてみた。
「GDPって、そんなに大事なんですか?」
「いい質問やな。根本から疑って考えることはいちばん重要や」
優斗の心配に反して、ボスはうれしそうに答えてくれた。
「このGDPってのは、1年間に、国中で支払ったお金の総額や。それは、作った物の総額でもある。たくさん物を作れば、生活も豊かになる。せやから、とにかくお金を使ってGDPを増やせばいい。そう考えるのが、今の社会では当たり前になっているんや」
当たり前と言われても、優斗には納得がいかない。
「だけど、そんなのもったいないですよ。腕時計がまだ使えるのに、買い替えたほうがいいなんて。誰も幸せにならないし、ムダな仕事を増やすだけだし」
「優斗くんの意見はまさに、経世済民の発想やな。僕もそう思うで。しかし、僕らはいつも点数に惑わされる。基本に立ち返って、本来の目的を考えんとあかん」
「点数って、そのGDPのことですか?」
「それだけやない。なんでも同じ話や。学校のテストでも、『いいね』の数でも、点数を稼ぐことに夢中になると、本来の目的を忘れてまう。良い点を取ろうと暗記だけしても、学力はつかへん。『いいね』が欲しくて写真を撮ることに夢中になると、今を楽しめへん。それと同じで、GDPを目的にすると、肝心の幸せになることを忘れてしまうんや」
七海は難しい顔をしていたが、声はいつもよりも静かだった。
「でも、どうすればいいんでしょうね。1人ひとりにとって、幸せの評価軸は違いますから。全体を把握するためには、とりあえずGDPが増えていれば、幸せが増えていると考えるしかなさそうな気がします」
「まさに、そこなんや」
ボスの声に力がこもる。
「大事なのは、今言うてくれたように、GDPは『とりあえず』の数字でしかないってことや。本来の目的を忘れたらあかん」
優斗には、自分に向けられた言葉のように感じられた。
これまで、勉強の目的をまじめに考えたことがなかった。テストで良い点数さえ取ればいいと思っていたし、高校を選ぶのも偏差値で周りに負けたくないくらいにしか思っていなかった。
田内 学
お金の向こう研究所
代表
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