(※写真はイメージです/PIXTA)

冬を暖かく過ごすために欠かせないエアコンですが、その電気代の高さに頭を悩ます人も多いのではないでしょうか?「家全体の温度を1℃上げるごとに暖房費はおおよそ13%もアップする」と一級建築士の松尾和也氏はいいます。松尾氏の著書『間取りと住まい方の科学』(新建新聞社)より、健康と電気代を考慮したエアコンの設定温度の「最適解」について、わかりやすく解説します。

暖房の「設定温度」の正解は?

次に暖房の設定温度について。究極に我慢すれば、家の中でダウンジャケットを着ながら同時にやせ我慢を重ねれば、温暖地であれば低断熱住宅でも無暖房でも暮らせなくはないと思います。しかしながら、それでは健康状態を損ねてしまいます。

 

日本にはありませんが、世界中のほとんどの国や自治体において、「最低室温規定」というものが制定されています。国によって微妙に異なりますが、大半が18℃以上と規定されており(WHOも18℃)、健康上理想的には21℃以上とされています。これは世界中で室温と健康に関する統計調査が数十万人単位で取られているなかで導かれた、明らかなる事実です。

 

21℃では寒がりの人がじっとしていると少し寒さを感じます。24℃までもっていけばほぼ全ての人が暖かいと感じますが、家全体の温度を1℃上げるごとに暖房費はおおよそ13%もアップします。それも加味すると21℃を目安に考えるのが、私自身の体感と数多くの(これまで家を引き渡した)お施主さまの感想からも妥当だと考えています。

 

ここまでは室温の話でしたが、同じ21℃でも室温よりも体感温度で21℃ある方がさらに理想的、もっと言うと床の温度が21℃以上あると圧倒的に満足度が高いということも経験的に理解しています。

 

ちなみに、日本の省エネ基準で計算する際の暖房設定温度は20℃です。また、表面温度が12℃を上回るような高性能な窓にしておくと、結露することもありませんし、窓際や足元に不快な冷気を感じることもなくなります。

最適な冷房の設定温度

次に冷房です。日本の省エネ基準では設定温度は27℃とされています。半袖短パンであればこの室温でも気にならないと思います。しかし、スーツや作業着など勤務中の長ズボンをベースに考える場合、帰宅直後や家事の最中のように代謝が良いときは確実に暑いと感じます。

 

また、エアコンは設定温度が高いほど除湿しにくいという性質も持っているので、カビやダニを発生させないようにするためには相対湿度60%程度はキープしたいと考えています。

 

このようなことをトータルで考えると、26℃(かつ相対湿度60%以下)を目安にするのが、健康で快適に過ごすためには最適だと考えています。

 

後先逆になりますが、この冬21℃、夏26℃という室温の目安は、高断熱住宅においては家全体24時間を対象としています。「いる時いる部屋」だけの室温ではありません。冬であれば、部屋間に温度差があるとヒートショックのリスクが高まります。

 

夏冬とも「いる時いる部屋」だけ快適にしようとすると、湿度を適切にコントロールすることが難しくなり、結果として結露やカビが発生しやすくなります。

 

低断熱住宅の場合、結露やカビとも同居しながら、最低限「いる時いる部屋」だけ「なんとか暮らせるレベル」まで持っていく、これが限界です。このレベルまで持っていくだけでも、低断熱住宅だと夏と冬に相当高いと感じる冷暖房費がかかってしまいます。

 

このように考えると、高断熱住宅でないと健康で快適に暮らすことがいかに難しく、冷暖房費がかかるのかが改めてわかると思います。

 

 

松尾 和也

松尾設計室

一級建築士

 

 

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※本連載は松尾和也氏による著書『間取りと住まい方の科学』(新建新聞社)より一部を抜粋・再編集したものです。

お金と健康で失敗しない間取りと住まい方の科学

お金と健康で失敗しない間取りと住まい方の科学

松尾 和也

新建新聞社

「家相」や「風水」は昔の人々の長年の生活体験や知恵に由来することが多く、必ずしも現代にそのまま当てはまるわけではない―― エコハウスの設計に長年取り組み、数多くの経験から導き出した設計の法則と住まい方を、設計…

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