(※写真はイメージです/PIXTA)

エアコンの購入時にメーカーや機能で悩む人は少なくありません。しかし、本当に大事なのは「どのような性能の家で夏・冬の日当たり状況がどういう部屋においては、どの程度の容量の機種を選定するのが適正か」ということだと、一級建築士の松尾和也氏はいいます。松尾氏の著書『間取りと住まい方の科学』(新建新聞社)より、わかりやすく解説します。

家電販売員は必ずしもエアコンに詳しいわけではない

たくさんの新築事例を見ていますが、エアコンの設置場所として最も多かったのはLDと主寝室にだけ最初から設置しているというパターンです。

 

子どもが自分の部屋を使うようになると、子ども部屋にもエアコンを設置することが多いと感じます。そして、新築時に設置されたエアコンは、基本的に壊れるまで使われるのが一般的ではないでしょうか。

 

エアコンの寿命は平均13〜14年とされています。夏や冬の時期に壊れると途端に困るので、急いで家電量販店に駆け込み、店員の説明と予算を照らし合わせて即決するというのが最も多いパターンだと思います。ひるがえって新築時に住宅会社が取り付ける場合は完全におまかせすることが多いと感じます。

 

ここで、一般の方が思い込みがちな「住宅会社や量販店で説明してくださる方はエアコンについて詳しいに違いない」は誤解です。

 

たしかに量販店の店員さんは各社の製品ごとの機能に関しての知識は非常に詳しいはずです。私などは到底及びもつかない知識をお持ちです。

 

しかしながら、“どのような性能の家で夏・冬の日当たり状況がどういう部屋においてはどの程度の容量の機種を選定するのが適正なのか?”という知識に関してはほぼゼロなのです。「畳数どおりに選ぶか、余裕を見てワンランク大きめの容量を選んでおきましょう」というアドバイスをされることが大半であるという調査結果も存在します。

 

家電量販店の店員さんは住宅のプロではないので、このようなアドバイスになってしまうのは仕方ないのですが、適切な容量を計算するには、その部屋ごとに暖房負荷、冷房負荷というものを計算する必要があります。

 

これらを計算するためには、家の断熱性能、換気方式、夏の日射遮蔽の具合、エアコンの運転方法の把握が最低限必要です。これらなしに適切な容量を計算するということは、そもそも絶対に不可能なのです。

 

にもかかわらず上記のようなアドバイスが多いというのは、エアコンが「いかなる状況でもそれだけの容量を選定しておけば、まず大丈夫だろう」と自信が持てるくらい、現代の住宅にとって過剰な能力を有していることがひとつの理由です。

 

「畳数表記」で選ぶと、暖房はたいていオーバースペックになる

もうひとつの理由は「メーカーがそのように記述しているのだから、そのとおりに推奨している」ということでしょう。

 

どのメーカーのどの品番でも、カタログにある〇畳用という表記はJIS規格に基づいて書かれたものです。ですがこれが“1964年の木造平屋無断熱住宅の畳数に基づいている”という事実を知っている方はほぼいらっしゃいません。

 

今の家と60年近く前の家とでは断熱・気密性能が明らかに違うため、畳数でエアコンを選ぶとたいてい暖房はオーバースペックになるうえ、必要以上に高額な機種を買うはめになります。

 

6畳用エアコンを「最小機種」として大半の方が認識していますが、上位機種ともなると最大暖房能力は6kWを超えます。わかりやすく言い換えると、こたつ1台が600W(0.6kW)なので、こたつ10台分以上の暖房能力を持っていることになります。いかに過大な能力かがおわかりいただけましたか。

 

 

これらから、エアコンの適切な容量選定方法は暖房負荷、冷房負荷を計算し、最悪のときにギリギリ対応できる容量のエアコンを選ぶこと。それが最もトータルコストが安くなります。しかし、実際にそれを計算できる、もしくはしてくれる人はほとんどいません。 

 

ではどうやって適切なエアコンを選んだらいいのか? そこでおすすめなのが電力中央研究所のサイトです。

 

エアコンを設置しようとしている部屋の状況や運転方法と時間、自分が重視する項目などを入力していくと、おすすめの容量を一瞬で表示してくれるという優れものです。このサイトを運営しているのは電力中央研究所といって、日本の電力会社が資金を出し合ってつくっているシンクタンクなので、信頼度は高いと言えます。

 

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※本連載は、松尾和也氏による著書『間取りと住まい方の科学』(新建新聞社)より一部を抜粋・再編集したものです。
※本連載に明記のメーカーや機種名は、筆者調べによるものです

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