(※写真はイメージです/PIXTA)

冬を暖かく過ごすために欠かせないエアコンですが、その電気代の高さに頭を悩ます人も多いのではないでしょうか?「家全体の温度を1℃上げるごとに暖房費はおおよそ13%もアップする」と一級建築士の松尾和也氏はいいます。松尾氏の著書『間取りと住まい方の科学』(新建新聞社)より、健康と電気代を考慮したエアコンの設定温度の「最適解」について、わかりやすく解説します。

高断熱住宅と低断熱住宅では「体感温度」が違う

実は室温といっても低断熱住宅の20℃と高断熱住宅の20℃では体感温度が大きく異なります。

 

また、低断熱住宅で節約重視を徹底し寒さを我慢しながら暮らすことは、健康面から考えると大きなリスクと隣合わせであることを知らない方が多いと感じています。

 

まずは体感温度の説明から。一般的な温度計で計測できるのは測定部の空気の温度となりますが、実際の人間の体感温度は「空気の温度」と「周囲の壁、窓、床、天井の温度を面積按分して計算した温度(平均放射温度という)」を足して2で割った温度になります。

 

高断熱住宅であれば冬の室温が20℃のとき、平均放射温度は18℃程度になります。これが低断熱住宅になると10℃くらいになります。この時、高断熱住宅の体感温度は(20+18)÷2=19℃となりますが、低断熱住宅の体感温度は(20+10)÷2=15℃。室温は同じでも体感温度は4℃も異なる結果となってしまいます[図表]。

 

出所:『間取りと住まい方の科学』(新建新聞社)より抜粋
[図表]住宅性能の差による体感温度の違い 出所:『間取りと住まい方の科学』(新建新聞社)より抜粋

 

この計算式上で低断熱住宅でも高断熱住宅並みの体感温度を得ようとすると、最低でも室温を25℃以上に設定しないといけません。ですが、それで計算上の体感温度が同じになったとしても、実際には足元の温度が体感にはものを言うので、高断熱住宅の方が快適性において明らかに上回ることになります。

 

ここからわかることは、冬の暖房において同程度の快適性を得ようとする場合、低断熱住宅は高断熱住宅よりもかなり高めの室温にしなければならないということです。

 

逆を言うと夏における低断熱住宅は高断熱住宅よりも平均放射温度が高くなるため、室温を低めにしないと暑さをしのぐことができません。これが大半の住宅において冷房が「きつい(寒すぎる)」と感じる理由です。

 

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※本連載は松尾和也氏による著書『間取りと住まい方の科学』(新建新聞社)より一部を抜粋・再編集したものです。

お金と健康で失敗しない間取りと住まい方の科学

お金と健康で失敗しない間取りと住まい方の科学

松尾 和也

新建新聞社

「家相」や「風水」は昔の人々の長年の生活体験や知恵に由来することが多く、必ずしも現代にそのまま当てはまるわけではない―― エコハウスの設計に長年取り組み、数多くの経験から導き出した設計の法則と住まい方を、設計…

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