(※写真はイメージです/PIXTA)

いよいよスタートした「新NISA」。旧NISAからの“神改正”により、将来の資産形成への期待値も高まるところですが、「従来の資産をどうすべきかも大事な問題です」と、証券アナリスト(CMA)資格も持つ日本経済新聞編集委員、田村正之氏はいいます。田村氏の著書『間違いだらけの新NISA・イデコ活用術』(日経BP)より、新NISAへの「資産の移し替え」についての考え方をみていきましょう。

課税口座で含み損の状態ならどうする?

では、課税口座で現在含み損ならどうするべきか。将来の上昇を見込むなら、課税口座のまま持っていても損益がプラスになるまでは課税が発生せず、NISA口座で保有するのと同じですから、そのまま持っておくのも選択肢です。

 

ただし他に利益の出ている別の課税口座があれば損益を通算できますし、損失の3年以降の繰り越しも可能です。そうした仕組みを使いたければ含み損の状態で売るのも選択肢です。

 

また含み損の状態で売却し新NISAに移せば、資産が回復してから移すよりも、NISAの限度枠の消費を抑えられるという効果もあります。資金が豊富で、NISAの枠の消費をなるべく抑えたい場合は、損益の回復前にNISAに移すことも選択肢となります。資産全体の状況をみて考えましょう。

海外転勤の可能性がある人は、金融機関選びに要注意

これまで新NISAの様々な魅力をみてきましたが、NISAには注意事項もいろいろあります。NISAの利用条件は「『日本に居住している』18歳以上(口座開設する年の1月1日時点)の人」なので、海外赴任などで日本を離れるとこの条件を満たさなくなります。

 

口座を開設している証券会社などに「継続適用届出書」を提出すれば、出国期間中の新たな買い付けはできないものの、提出した年の5年後の年末までNISA口座自体は継続することができます。そして帰国後「帰国届出書」を提出すると、また新規の買い付けをすることができるようになります。

 

ただしこれはあくまで制度上の話。このルールを適用するかどうかは任意で、金融機関によってその対応が異なります。こうしたやり方が可能なのは、例えば野村證券など少数です。

 

2023年9月現在、ネット証券を含めた多くの金融機関では、出国する場合、NISA口座は閉鎖または解約し、資産は課税口座に払い出すか売却しなければなりません。しかも金融機関によっては課税口座に移せるのは日本株と国債に限られ、投信は売却せざるを得ないこともあります。

 

自分が口座を開いている金融機関に対応をよく確認しておきましょう。あるいはこれからNISA口座を開設しようと思っているけれど海外転勤の可能性がある人は、金融機関選びの際に注意しましょう。

 

 

田村 正之

日本経済新聞社

編集委員

 

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※本連載は、田村正之氏による著書『間違いだらけの新NISA・イデコ活用術』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

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