英語を話すときは「文法のことは考えない」ことが重要
皆さんにとって英会話学習の目的はなんでしょうか。
「勤め先に外国からお客さんが来るから簡単な英語を話せるようになりたい」
「海外旅行で現地の人たちと直接交流を深めたい」
「洋画を字幕なしで観られるようになりたい」
「将来、ある程度の英会話力があるほうがよさそうだから」
さまざまな理由があるでしょう。
そして、“英語をもう一度初めからやり直す”というと、つい、「文法の学習」を思い浮かべがちです。
ですが、基礎英会話の習得には、文法の知識は必要ありません。
なぜなら、英会話の基礎は、日本人なら誰でも知っている2つの英文の中に入っているからです。その2つの英文とは、
This is a pen.(これはペンです)と、
I have a pen.(私はペンを持っている)です。
実は、この2つの文の語順を使って、あとは単語を入れ替えたり、a penの部分だけを残して他の表現に換えたりすることで、さまざまな意思を伝えることができるようになるのです。
●Piece of cake.(お安い御用です)、
●Good for you.(よかったね)、
●Anything for you.(なんでも言ってください)
たとえば、上記の3つの英文は、それぞれ、
●That is a piece of cake.(それはケーキ一切れを食べるようなものです)、
●It was good for you.(それはあなたにとってよかったです)、
●I’ll do anything for you.(あなたのためならなんでもします)
という文の「主語」と「動詞」を省略した形です。
丁寧に話すならこのように現在形や過去形など気にする必要がありますが、実際の会話ではこうした長い表現が使われることはあまりありません。それでも自分の意思を伝えることは十分にできるのです。
実際問題として、isとwasの違いくらいは最低限の知識としてあったほうがいいと思いますが、とにかく英語を話すときは、文法のことは考えないことが重要です。
TOEIC高得点でも「話せない人」は多い
これはTOEIC試験自体にスピーキング能力を試すものが重要視されていないことが最大の原因でしょう。そのために受験者の多くが「読む」「聴く」というインプット中心の勉強に偏ってしまい、「書く」「話す」というアウトプットの訓練をしていないことが理由に挙げられます。
また、高得点を取っているがゆえに、間違った英語を話してはいけないといった変なプライドが邪魔をして、口からなかなか英語が出てこないという面もあるでしょう。
ここから導き出される“英語を話せるようになるための最重要ポイント”は、「書く」「話す」というアウトプットの訓練をすること。
そして、「間違った文法で話してはいけない」といった、変なプライドを捨てることとなります。
だからこそ、本書の“文法なんて気にしなくていいから、とにかく「3語で話せ」”というのが効いてくるわけです。
ネイティブほど「短く」「率直に」表現する
「3語」で話すメリットは、まだあります。日本語で話すとき、相手がわかっていることは、できるだけ省略して短く伝えるでしょう。同様に英会話も、できるだけ短く伝えることが求められるのです。
たとえば、一般的な英会話の本には、お世話になった人への感謝を表す言葉として、こんな例文をよく見かけます。
●Thank you for everything you have done for me.
(私のためにしてくれたすべてのことに対して感謝します)
ですが、この英文は実際には、以下の3語で十分ですし、むしろ下記のほうが自然な英語と言えましょう。
●Thanks for everything.(いろいろありがとうございました)
実際に洋画やテレビドラマを英語の字幕付きで観てみると、こうした3語程度の極めてベーシックな単語で成り立っていることがわかります。
3語でこれだけ話せる ~例:おもてなしの場面~
たとえば、あなたが飲食店の店員で外国のお客さんの接待をするときも、こんなふうに、たった3語の英語で、十分にもてなせます。
●Ready to order?(ご注文はよろしいでしょうか)、
●Anything to drink?(お飲み物はいかがですか)、
●How is it?(お味はいかがですか)、
●Are you finished?(お食事はもうおすみになりましたか)
本書は、わずか3語でも自分の「感情」「意思」「状況」をきちんと伝えられる英語のフレーズを500以上厳選して収録しました。
すべて、日常会話はもちろん、ビジネス・旅行・メール・SNSまで幅広いシチュエーションで使えるものばかりです。ただし、冠詞などを含めてやむなく4語になってしまう例が少々あることをご容赦願います。
次項では、3語で「状況」を伝えるフレーズの具体例を紹介します。
【状況】3語で「トラブル」を伝えるフレーズ
「パスポートが見つからない」=My passport’s missing.
⇒My passport’sはMy passport isの短縮形です。行方不明で今探している段階であることを表します。探しても見つからなかったら、My passport is lost.です。
「締め出されてしまった」=I’m locked out.
⇒オートロックのホテルの部屋に鍵を置いたまま、外に出て中に入れなくなったときに使います。I left my key in the room.(部屋にカギを置き忘れた)と言ってもいいでしょう。
「困ったことになった」=I’m in trouble.
⇒I’m in big trouble.ならさらに困った状態を表します。こう言った後に、I’ve lost my passport.(パスポートがなくなった)、My purse was stolen.(財布を盗まれた)などと続けます。
「トイレの水が流れない!」=The toilet won’t flush!
⇒won’tはwill notの短縮形で「どうしても・しようとしない」という意味を表します。「車のエンジンがかからない」ならThe car won’t start.です。
「ドアが開かない」=The door won’t open.
⇒ヨーロッパのホテルなどでは鍵がなかなか開かない場合が多いので、必須の表現です。逆に、鍵がかからない場合は、I can’t lock the door.と言います。
「忘れ物した!」=I forgot something!
⇒Oh, I forgot something.のように使います。具体的に忘れ物を表したいときは、Oh, I forgot my commuter pass.「あ、定期券を忘れた」などと言います。
「(自分が)迷子になった」=I got lost.
⇒I lost my way.も同義表現です。地図を開いて、「今どこにいますか?」と聞きたければ、Where am I on this map?と言ってください。
「テレビがつかない」=TV doesn’t work.
⇒部屋のテレビが作動しないときにはworkを使います。「エアコンが使えない」もAir-conditoner doesn’t work.です。
「シャワーが壊れている」=The shower’s broken.
⇒The shower is broken.の短縮形です。他に、The tap’s broken.でも、Water won’t come out.でもOKです。
清水 建二
KEN’S ENGLISH INSTITUTE代表取締役
東京都浅草生まれ。埼玉県立越谷北高校を卒業後、上智大学文学部英文学科に進む。ガイド通訳士、東進ハイスクール講師、進学の名門・県立浦和高校で教鞭を執り、英語教材クリエイターとして活躍。高校教諭時代は、基礎から上級まで、わかりやすくユニークな教え方に定評があり、生徒たちからは「シミケン」の愛称で人気を博す。
現在は作家・文筆業に専念するかたわら区民講座やカルチャーセンターなどで語源をテーマに講義を行っている。著作は、シリーズ累計100万部突破の『英単語の語源図鑑』(かんき出版)など100冊以上。
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