営業やマーケティング、企画などの担当業務を持つ人材が、全社横断の「プロジェクトチーム」に抜擢された場合、どんな姿勢で仕事に向き合うべきでしょうか。本稿では、東京エグゼクティブ・サーチの代表取締役社長・福留拓人氏が、若手~中堅のビジネスパーソンに向け、プロジェクトとの向き合い方について解説します。
全社横断の「プロジェクト」と日々の「担当業務」…ビジネスパーソンはどう折り合いをつけるべきか?【キャリアのプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

会社が評価するのは、「日常業務をこなしながら」プロジェクトに取り組む姿勢

ここでとくに若いビジネスパーソンのために伝えておきたいことがあります。一言で表現すると、「プロジェクトには、日常の業務プラスαで取り組んでこそ価値がある」ということ。

 

プロジェクトチームのメンバーは、いわゆる専従人員ではありません。なかには重要なプロジェクトもあるせいか「ほかのことを手掛けると中途半端になるから集中しろ」と言われる場合もあると思います。ですが、プロジェクトが本当に重要で、確実に結果を出さなければならないならば、会社は中途採用でそのための人員を確保しているはずです。

 

その前段で社内の知恵を結集してテーマに取り組もうとしているということは、営業やマーケティング、開発など、普段担当している仕事を持つメンバーが、会社の高い次元の目標のために集められているということ。そうした日常業務をこなしながらプロジェクトに参加する姿勢がもっとも評価されることになるのです。

 

ですからプロジェクトチームに入ったとき、「通常業務よりプロジェクトに注力してくれ」という指示があったとしても、なるべく会社と交渉の上で普段の業務もできるだけ引き受け、日々の仕事も高いレベルでこなしつつ、プロジェクトで高い実績を挙げることを考えてみましょう。

 

プロジェクト専任になるということは、既存の業務を同僚や部下などに引き継ぐことになります。引き継がれたほうは、理屈では理解していても、やはりどこかで面白くないものです。ですからプロジェクトというものは、日々の業務にプラスαで担当するからこそ価値があり、また周囲からの高い評価にもつながるのです。

 

高い次元のミッションを任されたからルーティンワークは周囲に引き継ぎ、プロジェクトで結果を出すことだけに集中するという考え方も間違いではないでしょうが、もう一段高いレベルの発想が必要です。

 

プロジェクトというのは結果が読めない試みに全員が取り組んでいることが多く、実際は大変なことばかりです。しかしこれは、5年も10年も続くものではありません。どこのプロジェクトチームでも一定期間で結果の検証が行われるはずです。

 

ですからそこに選ばれたということは、会社の上層部に期待されているということであり、半年とか1年とかの一定期間を遮二無二頑張るのは素晴らしい経験になるはずです。二人分、三人分の仕事をこなす人生の勝負どころとして、ぜひ頑張ってみるべきでしょう。

 

ここで人の何倍も頑張ったプロセスと実績は、近い将来のキャリアアップに大きく貢献するはずです。

 

筆者は多くの社長候補に対してヘッドハンティングを行い、数千枚の履歴書をみてきましたが、高く評価できる経営陣の多くが20~30代にかけて日常業務プラスαのプロジェクトで目覚ましい結果を残しています。ですからプロジェクトメンバーに加わることを打診された際は、「重荷を背負わされて貧乏くじを引いた」と思うのではなく、ぜひ前向きに捉えてほしいものです。