「あの会社、ヤバいらしい」…こんな情報が流れると、そこにいる会社の人材に競合他社が目を付けるのはよくあることです。「即戦力で活躍できるだろう」とWin-Winの関係になりそうですが、実際には、慌てて移籍を決めることにはさまざまなリスクがあります。本稿では、東京エグゼクティブ・サーチの代表取締役社長・福留拓人氏が、会社が傾いたときに取るべき行動・考え方について解説します。
会社が傾き「人材の草刈り場」に…泥船から抜け出したくても競合他社への「安易な転職」は避けたい理由【キャリアのプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

会社が傾くと、競合他社から「人材の草刈り場」として目を付けられる

企業というのは順風満帆を謳歌する時もあれば四面楚歌に窮する時もあります。時流や市況の変化についていけなかったり、意表を突かれるような不祥事に見舞われたり、存続が危ぶまれるような事態になることもあります。これらは企業の規模にかかわりません。実際、そのような企業が競合他社から「人材の草刈り場」にされてしまうのをよく目撃します。

 

業界によっては発展中の仁義なき戦いで、人材の争奪戦が繰り広げられている場合もありますが、草刈り場の発生頻度がいちばん高いのは、問題を起こした会社が傾いてきた時ではないでしょうか。傾いた会社があったとして、それがマークされた場合によくあるのは、競合他社から「あの会社は泥船だから、人材に片端から声を掛けてくれ」とオーダーが入ることです。

 

何らかの問題が起きると、その渦中にある企業は社内に動揺がありますから、「泥船から我先に逃げ出そう」と、すぐに見切りをつける人もいます。その一方で、最後まで泥船のなかで努力するような忠誠心の高い人も存在するわけです。現場は非常に混沌とした状況になりますが、社員としては自分の人生や家族の将来を優先的に考えて、善後策を模索するのは当然です。「我先に」となるのも仕方のないことだと考えます。

 

泥船に乗っている従業員は、転職の準備やキャリアの棚卸しをはじめるわけですが、そうした準備が整っている人は少ないのが現実です。動揺して冷静さを失ったなかで、とっさの判断をしてしまいがちです。