「充分な金を稼いだ。だが魂が腐っていくような感覚があった」
2020年に再会したとき、カープはこう話してくれた。「トゥールビヨンでの最後の数年間は臨床的にうつ状態にあった。じつは、成功の絶頂にいたときも患っていた」 。金も称賛も派手なライフスタイルも、どれも彼を幸せにはできなかった。
「リタイア後の人生を何度も送れるくらい、充分な金を稼いだ。だがそれでも、いつもどこか空虚というか、魂が腐っていくような感覚があった」
短期の賭けに次々に打って出なければならないトレーダーの仕事に中毒になっているとも感じた。
「値動きの読みあいに勝とうとするこのゲームは、依存性は高いが、実際には何もつくりださない」
カープは過去に人生を方向転換したことがある。20代のころ、加工食品やアルコール、カフェイン、さらには化学物質を含むシャンプーやデオドラント品をいっさい使わない「ウルトラクリーン」なライフスタイルを実践し、健康を取りもどした。
40代になったいま、彼は再び人生をつくりなおそうとしている。「永続的な価値」をもつ何かを創出しようと決心し、持ち株会社を新たに立ちあげ、「人の健康的な生活に役立つ」企業を支援し育成する事業に乗りだしたのだ。まさに彼の強みを生かせる隙間市場(ニッチ)であり、クリーンな暮らしと持続可能性を重視する事業姿勢は彼の価値観に合致している。
カープは住む場所も変えることにし、マンハッタンを離れ、妻と子どもを連れてテキサス州オースティンに移住した。そこを選んだのは、「健康とウェルネスのメッカ」であり、「気候がよい」「自然に包まれた暮らし」「州法人税や個人の所得税がかからない」「くたびれたニューヨークの金融人が味わえなかった現実肯定感がある」土地だったからだ。
彼が最も望んでいたのは金ではなく、バランスのとれた健康的な生活と、人を助けるという「理念に裏打ちされた」事業を展開する機会、そして自分の運命を自分でコントロールできる充足感だった。
いま、彼はどんな気持ちでいる? 「この20年間で最も健康で最も幸せに暮らしている」。
金融ジャーナリスト
ウィリアム・グリーン
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