地方では無料で手に入る“意外なもの”
大都市ではないところで起業してよかったことはいくつもある。僕にとって一番大きかったのは、行き詰まったときに簡単に教えてくれる先輩経営者がいたこと。
地方の人は教えたがりである。「今、こんなことで困っている」と先輩経営者に相談すると、すぐに教えてくれる。
何しろ、会社を設立するときに銀行口座に50万円あったから、50万円を資本金にしたというくらい何も知らなかった僕だ。銀行というのは給料が振り込まれるところだと思っていて、事業をするために銀行とつきあうという発想さえなかった。だから、社長をやっていればわからないことだらけだ。それを教えてもらえる人がいくらでもいるというのは本当にありがたかった。
もちろん、都会には人も情報もたくさん集まっている。先輩経営者でも、きっと「すごい人」が見つかるだろう。でも、そういう人から教えを受けるとしたらお金がかかるのではないだろうか? コンサルタント料とか、セミナー参加費とか、コミュニティーの会費といった名目で。 都会ではメンターが見つかりやすいかもしれないけれど、無料ではないのだ。
地方は人の数が少ないから、「すごい先輩経営者」「理想的なメンター」に出会える可能性は低いかもしれない。その代わり、ただで快く教えてくれる人がたくさんいる。すごい人に教わるわけではないから、まちがったことを言われるかもしれない。それでいいのだ。たくさんいる教えたがりの人たちの言葉を聞いて、情報をいろいろ集めて、取捨選択は自分でやればいい。
「すごい人」と呼ばれるような知り合いもいないわけではないけれど、僕にとっての宝は、高知で出会った普通の人たちだった。普通だから、それこそ青年会議所に入ったばかりの時期には、はっきり言って「何でこんな人たちとつきあわなきゃいけないんだ」なんて思っていた。だから「坂元は態度がでかい」「先輩を先輩とも思わんやつ」と言われたし、けんかをした人もいる。
けれども、つきあっていくうちに、周りの人たちに助けられている自分に気づかされる。すごい人ではなく、普通の人たちが自分を支えてくれていることに気づく。
そうやって、僕は周りの人にとがった部分を丸めてもらった。おかげで何とか生きてこられたのだ。
〈レッスン〉
「すごい人」の本や講演会やセミナーもいいけれど、時には近くにいる「普通の人」の言葉に耳を傾けてみよう。自分のやりたいことについて相談してみよう。
ポイントは数を撃つこと。ネガティブなことや間違ったことを言われても、多数の中の一部なら気にならない。
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