「自宅に住み続けたい」という思いで養子縁組をしたが…
このとき紘子さんはあることを考えていた。義母亡き後、この家に住み続けられるだろうか、ということだ。
結婚以来ずっと住み続けていた家でそのまま暮らしたい。しかし法定相続人は義兄と、紘子さんの子どもたちだ。財産を分ける際に、子どもたちは家の権利を主張できるだろうか。
交渉になったら難しいだろう。年齢差もあるし、立場的には伯父と甥、姪だ。
「義兄と子どもたちがやり取りするのは、ちょっと大変かなと思いました。でも私は嫁なので、立場的には権利がないし、この話には入れない」
紘子さんは、慣れ親しんだ場所に住み続けたいという気持ちもあり、養子縁組を受けることにしたのだ。
紘子さんが養女になったことで、義母の法定相続人に紘子さんが加わった。相続人は①義兄3分の1、②夫の子どもたち3分の1(2人が6分の1ずつ)、③紘子さん3分の1となった。
義兄に伝えなければならないが、紘子さんからは言いにくい。義母は「息子には私から話をしておくから、紘子さんからは何も言わなくていいよ」と言ってくれた。紘子さんは義母から話してくれるなら安心だ、と思っていた。
いずれ来る相続問題に備え、「相続税セミナー」に参加
私が紘子さんと最初にお会いしたのは、その頃だった。私は紘子さんの地元の住宅会社が主催する相続税セミナーに、講師の1人として呼ばれていた。
「そのとき初めて、そういうセミナーに参加したんです」(紘子さん)
まだ義母はご存命だったが、いずれ来る相続を考えると、いろいろ不安になっていた。そんなところにセミナーの知らせをもらったのだという。
講演の休憩時間に、私は紘子さんに声をかけた。セミナーに参加される方のほとんどが、ご夫妻や親子で来ている方ばかりの中、1人で参加されていた紘子さんを見て「何かお話したそうだな」と感じたのだ。
その後、紘子さんとのやり取りは細く続いていた。本格的にご相談をいただいたのは、紘子さんの義母が亡くなって、その相続が落ち着いてからだった。
義母の死後、とんでもない事実が判明
病気を抱えていたが、長患いせずに義母は82歳で亡くなった。
「入院していましたが、家に帰りたいというので、最期は家で看取りました。大好きな家で好きなように暮らしてもらって、数か月、私としては精いっぱいやらせていただきました」
しかし、義母の死後にとんでもないことがわかった。義母は義兄に紘子さんが養女になった話をしていなかったのだ。
「俺はおふくろから何も聞いてないよ、知らない。そんなのとんでもないよ!」当然ながら義兄は突っぱねた。
「逆の立場なら、私もそう思ったかもしれないと思います」義母から頼まれた養子縁組だったことを説明したが、義兄の立場では納得がいくはずもない。
「私がもう少しきちんとお母さんに確認すればよかった」と紘子さんは後悔している。
「やはり嫁で入った人間ですから、自己主張していいのか、いけないのか。でも、自分と自分の子どもは守らなきゃいけないし、生活もありましたから。それに、お義母さんとは最後まで一緒に生活させてもらって、看取ったという自負が自分の中にはありました」
義母の相続財産は、実家の土地と預貯金が主なものだった。紘子さんは、なるべく義兄の要望に従って遺産を分割した。結局、紘子さんは住んでいた自宅を相続した。角地の150坪ほどの一軒家である。
松本 隆宏
ライフマネジメント株式会社
代表取締役
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