※画像はイメージです/PIXTA

中国は経済政策を大きく変えた1978年から、住宅や道路、港、電気通信ネットワークなどを中心に、大規模なインフラ投資を行ってきました。猛烈な勢いで進められたインフラ建設は過剰だと批判をしばしば受けるのですが、意外にもそれほど無駄ではなかったそうです。しかし2010年ごろからは過剰が明らかになりつつあるものの、猛烈な勢いのインフラ建設はなかなか止まりません。本記事では、香港の金融調査会社ギャブカルのリサーチヘッドであり、米国の米中関係委員会(NCUSCR)のメンバーでもあるアーサー・R・クローバー氏による著書『チャイナ・エコノミー 第2版』(白桃書房)から、これまでのインフラ投資の評価や、その負の側面について解説します。

中国のインフラは作りすぎか?

過去20年間につくられたインフラは、中には大きな例外もあるが、大半は有用で生産的なものだ。

 

中国の熱狂的なインフラ建設に関しては、信じがたいほどの量が建設されていることから、主にその無駄に批判が向けられる。こうした大ざっぱな批判は、いくつかの点を見落としている。その主たるものは中国の大きさだ。

 

中国は一大陸に相当する規模の国で、アラスカを含めた米国と同じくらいの面積を持ち、そこに米国の4倍以上の人口を抱えている。人口1人当たりで見ると、中国が米国や他の先進国と比べて、インフラを建設し過ぎているという指標はほぼ見当たらない。

 

また、中国のインフラ投資の決定には複雑な要因が絡んでおり、豊かな国の人々はそうした要因を誤解しやすい。

 

一方で、豊かな先進国は成長速度も遅く、サービス業中心の経済で、インフラは大昔につくられ、今や当たり前のものになっている。

 

中国では過去30年間の大半の期間で年率10%の成長を遂げてきた。これは、7年ごとに経済規模が2倍になるということだ。つまり、他の条件が変わらないとすると、改革開放期の大半において、7年ごとにインフラを2倍にしなければならなかったということになる。

 

したがって、まず先に建設をして、後から考えるというアプローチもたいていは理にかなっている。

 

過剰投資に見えるが、実際はそうではない好例:高速鉄道ネットワーク

投資の決定の複雑さと、他国との比較が必ずしも適切でないことは、高速鉄道ネットワークによく表れている。

 

このプロジェクトは次のような点が批判された。中国はこのような洒落た乗り物を導入するような発展段階にない。コストがかかり過ぎる。投資を回収できるわけがない。建設のスピードが速すぎる――。

 

最初の点は、単純に根拠がない。日本が名高い新幹線を最初に開通させたのは1964年で、国民1人当たりのGDPが、2007年の中国とほぼ同じレベルだった時だ。他の批判は主に中国国内で行われたもので、妥当な批判だった。

 

しかし、異なる意見もあった。高速鉄道を先進国で建設する場合には、人件費と土地の値段が高いため、費用がかかることがよく知られている。しかし中国では、土地も人件費も設備費も安く、距離当たりの建設費は豊かな国々よりはるかに安かった。

 

また、中国の既存の鉄道は超満員で、輸送効率はどの主要国と比べても何倍も高かった。2008年のデータでは、中国の鉄道の総距離は世界全体の6%だったが、乗客数では全体の4分の1を占めていた。

 

旅客専用の鉄道網を新たにつくれば、古い旅客用の鉄道ネットワークを転用し、とても必要性が高い貨物輸送能力を確保できる。計画を立案した人々は、既存の鉄道で貨物輸送収入が増えることによって、新たな旅客鉄道の投資費用をかなり回収できると計算した※1

 

高速鉄道ネットワークは、非常に収益力の高い路線もあれば、そうでない路線もあるが、全体とすれば、おそらくは中国の交通システムに組み込む価値があったと言えるようになるだろう。

 

※1 高速鉄道プログラムの正当性について詳しくは、以下を参照のこと。Will Freeman, “High-speed Rail: The Iron Rooster Spiffs Up,” China Economic Quarterly (June 2010): 7-9 .

 

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チャイナ・エコノミー 第2版

チャイナ・エコノミー 第2版

アーサー・R・クローバー

白桃書房

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