※画像はイメージです/PIXTA

1979年に「改革開放」政策が始まり、それ以降しばらく、民間の力を引き出す一方、国有企業は民営化していく方針の下、政策が実施されてきました(「国退民進」)。しかしこのところ、アリババやテンセントのようなIT企業への締め付けが強まるなど、そのような民間活力を引き出す政策に変化があり、「国進民退」となったようです。そこで本記事では、香港の金融調査会社ギャブカルのリサーチヘッドであり、米国の米中関係委員会(NCUSCR)のメンバーでもあるアーサー・R・クローバー氏による著書『チャイナ・エコノミー 第2版』(白桃書房)から、中国の企業をめぐる政策の変遷について解説します。

国有企業を優遇しようとするワケ

このような変化の背景には、4つの要因がある。

 

第一に、胡錦濤政権は前政権に比べて全般的に国家統制主義的で、政策の手段として国有企業をより積極的に活用した。習近平も国有企業優先の傾向があることは明らかで、その傾向はさらに強くなっている。

 

第二に、2000年代前半に国有企業の利益が増加したことから言えるのは、国有企業の市場支配力を削ぐような改革に反対するロビー活動を、国有企業が実施する手段も、インセンティブもあったということだ。

 

第三に、世界金融危機に対応するため、政府は2008年末に大規模な経済刺激策を導入したが、そのほとんどが、国有企業や地方政府のインフラ・プロジェクトという形で行われた。国有企業は経済安定のために必須とされた役割を担うため、借り入れを増やした。

 

これによって、もっと生産性の高い用途に融資を振り向けるコストは上昇した。というのも、国有企業の信用枠を縮小すると、多くの企業が財政的に苦しくなるか経営破綻することになると考えられたからだ。

 

第四に、経済構造が国有企業に有利な方向に転換してきている。2008年から18年の間に、経済における工業と建設(そのかなりの部分が民営化されてきた)の生産高の割合は、47%から41%に低下し、一方で、金融や電気通信、医療・保健のようなサービス(国有企業の役割が依然として大きい)の割合が43%から52%に上昇した。

 

全体として見ると、中国の企業部門の収益性と生産性を維持する上で、十分な対策が取られているとは言えない。中国経済が速いペースで成長(たとえば、「2020年代は年率5%以上の成長」など)し続けるには、企業の効率は改善されなければならない。

 

効率の改善は、民間企業が事業を行える領域を拡大することと、国有企業の合理化の両方によって実現される必要がある。
 

 

アーサー・R・クローバー

香港金融調査会社ギャブカル

リサーチヘッド

 

※本記事は、THE GOLD ONLINE編集部が『チャイナ・エコノミー 第2版』(白桃書房)の一部を抜粋し、制作しました。

 

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