納税者の“うっかり”を見逃さない税務署…「年収の壁」を超す配偶者控除で「4,800万円の脱税」がバレたワケ【元マルサの税理士が解説】

納税者の“うっかり”を見逃さない税務署…「年収の壁」を超す配偶者控除で「4,800万円の脱税」がバレたワケ【元マルサの税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

映画『マルサの女』で有名になった国税局査察部(通称マルサ)。特定の税務署に設置される「特別調査部門(トクチョウ班)」はその登竜門ですが、トクチョウ班は案内板にも職員録にも記載されない“シークレット部隊”だと、元マルサで税理士兼住職の上田二郎氏はいいます。上田氏が「トクチョウ班」統括官時代に担当した「脱税の具体例」を解説します。

執念で掴んだ「架空給与960万円」

張り込むとは言え、事務所前の道路は身を隠す場所もなく、留まっていられる時間はせいぜい5分。そのため調査の行き帰りや、昼食時、出勤や退勤時など、ありとあらゆる機会を捉えて張り込んで、そのすべてを記録に残した。

 

年が明け、3月15日が過ぎて司法書士の確定申告書を見つけ出すと、A子に600万円、B子に360万円の給与が支払われている。やはり今年の申告書にも年齢の記載がない。これで、やっと前年分の架空給与960万円が確定した。

 

調査の着手は7月10日の源泉税の納付期限を待つことにした。これを確認すれば、今年1月~6月の架空給与が確定する。張り込みを継続して6ヵ月。延べ127回、合計61時間におよぶ張り込みを行ったが、A子やB子の出勤は一度もなかった。

調査はやってみなければ分からない

今年度のトクチョウ班のゲンを担ぎ、司法書士の調査を新年度一発目に決めた。

 

しかし、張り込みを開始したのはわずか6ヵ月前。A子やB子の給与は、ターゲットが開業した5年前から変わっていないが、架空給与は開業当初からだったのか。それとも体調を崩すなどして勤務できなくなったのかは、踏み込んでみなければ分からない。

 

無予告調査の最大の目的は、いつから架空給与だったのかを確定することだ。しかし、調査に入ると結果はあっさり判明する。調査経過は以下のとおりだ。

 

古くから司法書士事務所を営んでいた先代(A子の夫/当時70代後半)が、高齢となり事業の継続が難しくなった。ただ、身内に跡取りがいなかったため、従業員の司法書士(本件のターゲット)に事業を継承した。

 

その際、営業権の譲渡対価を最初の5年間に4,800万円(月額80万円)、次の5年間に3,000万円(月額50万円)の総額7,800万円と決め、10年間の分割払いとする『事務所引継ぎに関する契約書』を結んだ。

 

契約書には、先代とターゲットの司法書士、そして税理士の3人が署名・捺印している。

 

契約の際、営業権譲渡による先代の税負担を回避する目的で、妻A子に対する給与(月額50万円)と娘B子に対する給与(月額30万円)に仮装して支払うことに決めた。

 

この手口によって、先代は営業権譲渡対価にかかる累進課税を回避し、しかも、A子らに給与として支払うことによって給与所得控除(サラリーマンの概算経費)を使うことができ、大幅に税額を軽減することができた。さらに、先代の収入である「営業権譲渡対価」を、妻A子と娘B子の給与収入に付け替えることで相続税対策をも狙った巧妙な手口だ。

 

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