(写真はイメージです/PIXTA)

国内不動産市場の2023年第3四半期の不動産取引総額は前年同期比でプラスに転じた。また外国資本による購入額は前年同期比でプラスとなった。世界全体の不動産取引額は前年の半分程度にまで落ち込む一方、アジア太平洋では相対的に減速が緩やかな状態が続き、日本の不動産投資市場は、低金利が継続している安定した金融市場を背景に、世界で最も活発な市場となっている。しかし従来相対的に投資額が大きかったアメリカの投資家が、日本の不動産に対して今後も投資を控えることを続ければ、国内不動産市場も悪影響をもたらす可能性はある。また今後さらに円安が進むことになれば、外国資本による日本国内不動産投資が減少するリスクが生じる。本記事では、不動産投資市場動向(2023年第3四半期)と今後の不動産市場見込みについてニッセイ基礎研究所の渡邊 布味子氏が詳しく解説します。

外国資本の国内不動産購入の動向(2023年第3四半期)

2023年第3四半期の外国資本による購入額は約5,025億円で、前年同期比+11.0%となった(図表2)。2023年第1四半期から第3四半期までの外国資本による国内不動産の購入額は▲4.3%と、上半期の前年同期比(▲16.2%)から改善した。



用途別購入額(2023年第1四半期から第3四半期の累計)の割合は、物流施設が22.7%(前年同期比+18.0%)、ホテルが25.2%(+13.0%)、商業施設が17.7%(+6.4%)と増加し、オフィスが4.9%(▲32.8%)、賃貸マンションが17.2%(▲13.4%)、開発用地が11.2%(▲7.2%)と減少した。オフィスへの投資が避けられているほか、コロナ禍後に活況となった外国資本による賃貸マンションの取得は一段落したとみられる。



個別の大型取引では、シンガポールのREITメイプルツリー・インダストリアルらがSUMAデータセンターを、シンガポールの投資会社SCキャピタル・パートナーズ、アブダビ投資庁、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントが27軒の国内リゾートホテルポートフォリオ2を取得した。

 

[図表2]国内不動産の売買額(外国資本の取得、四半期、前年比)

 


2ポートフォリオを構成する物件は、ホテル&リゾーツ和歌山串本、ロイヤルホテル大山、アクティブリゾーツ霧島、ロイヤルホテル沖縄残波岬、ロイトン札幌、アクティブリゾーツ裏磐梯、ホテル&リゾーツ南房総、ロイヤルホテル能登、ホテル&リゾーツ京都宮津、ホテル&リゾーツ別府湾、ロイヤルホテル那須、ロイヤルホテル富山砺波、ホテル&リゾーツ伊勢志摩、ホテル&リゾーツ長浜、ホテル&リゾーツ南淡路、アクティブリゾーツ宮城蔵王、ロイヤルホテル八ヶ岳、ロイヤルホテル長野、TheHamanako(ザ浜名湖)、TheKashihara(ザ橿原)、ホテル&リゾーツ和歌山南部、ロイヤルホテル宗像、ホテル&リゾーツ佐賀唐津、SCCPダイワリゾートホテルズ(3棟)である。

世界とアジア太平洋地域の売買動向

2023年第3四半期の世界の不動産取引額は約2,594億ドル(約38兆7,438億円3、前年同期比▲43.8%)と大幅に減少し停滞が続いている。エリア別ではアジア太平洋が約1,445億ドル(約21兆5,849億円、▲33.6%)、南北アメリカが約801億ドル(約11兆9,647億円3、▲52.6%)、欧州・中東・アフリカが約348億ドル(約5兆1,942億円3、▲53.4%)と各エリアとも大幅減少となった(図表3)。



欧米で在宅勤務の普及等でオフィス市況の悪化が続いていることに加え、金利が上昇している国では不動産価格が下落傾向となっており、世界全体の不動産取引額は前年の半分程度にまで落ち込んでいる。一方、アジア太平洋では相対的に減速が緩やかな状態が続いている。

 

[図表3]世界の不動産取引額(エリア別・前年比

 


32023年第3四半期末の為替レートをもとに換算した。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年11月21日に公開したレポートを転載したものです。

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