裁判所が住民の存在を「瑕疵にあたらない」と判断したワケ
他方で、上記のような迷惑行為を行うCの存在は、隣室である本件居室の居住者において、心理的に一定程度その使用を制限されるものであることは否定できないとしつつも、以下のように、購入時の価格3,100万円からわずかな減額(150万円)でマンションが売却できたこと等を理由に、瑕疵には当たらないと判断しました。
「本件居室については、今後の使用を前提として、賃貸物件や売却物件としての募集をかけており、仲介業者の担当者も、Cの迷惑行為の存在に関し、成約に至るか否かは購入希望者が気にする度合によるとしている」
「また、実際にも、隣室であるCの迷惑行為の事実や原告の夫の本件居室内での死亡の事実を告知したうえで、原告の購入から約3年が経過した時点で、原告の購入時の代金3,100万円から150万円を減額した代金2,950万円でDに売却することができている。
さらに、本件居室の購入希望者がなかなか現れなかったことや、購入希望者から購入を断られたことについては、本件居室が日当たりの悪い1階に位置することや、原告の夫が本件居室内で自死したことも原因となっていたことが認められる」
「以上によれば、上記のような迷惑行為を行うCの存在は、隣室である本件居室の居住者において、心理的に一定程度その使用を制限されるものであることは否定できないとしても、一般人であれば誰もがその使用の際に心理的に十全な使用を著しく妨げられるといえるような、一般人に共通の重大な心理的欠陥があるとまではいえない。
したがって、Cの存在により本件居室が売買の目的物として通常保有すべき品質・性能を欠いているとして、民法570条の「瑕疵」があるとはいえない」
なお、裁判所は、結果的に売却金額が購入時より150万円の減額となったことについては、
「代金の減額事由としては、購入から約3年の経年劣化、本件居室が1階に位置すること、原告の夫が本件居室内で自死したことなど、Cの存在以外の事由も考えられることからすれば、瑕疵と相当因果関係のある損害ともいえない。
また、原告の夫の自死がCの迷惑行為と相当因果関係を有することについて認めるに足りる証拠はない(原告の主張においても一因とするにすぎない)」
と述べて、やはり隣人の住民の存在による損害には当たらないと判断しています。
本件は、結果的に、この隣人の存在を原因とした売却価格の減額が発生しなかったと考えられることを理由に、瑕疵には当たらないと判断したものと考えられます。
しかし、一般的には、迷惑行為を行う隣人の存在は、買主にとって心理的に重大な欠陥となりうる場合もありますので、このような隣人の存在については、売主において知り得たということであれば売買の際には十分に説明しておくことが無難といえます。
※この記事は2023年10月1日時点の情報に基づいて書かれています(2023年12月5日再監修済)。
北村 亮典
弁護士
大江・田中・大宅法律事務所
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
注目のセミナー情報
【税金】11月27日(水)開催
~来年の手取り収入を増やす方法~
「富裕層を熟知した税理士」が考案する
2025年に向けて今やるべき『節税』×『資産形成』
【海外不動産】11月27日(水)開催
10年間「年10%」の利回り保証
Wyndham最上位クラス「DOLCE」第一期募集開始!
【事業投資】11月28日(木)開催
故障・老朽化・発電効率低下…放置している太陽光発電所をどうする!?
オムロンの手厚いサポート&最新機種の導入《投資利回り10%》継続を実現!
最後まで取りつくす《残FIT期間》収益最大化計画
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】