3,100万円で買ったマンション「隣人が最悪」だった…隣人の存在を“告知しなかった”仲介業者に「損害賠償請求」した結果【弁護士が判例解説】

3,100万円で買ったマンション「隣人が最悪」だった…隣人の存在を“告知しなかった”仲介業者に「損害賠償請求」した結果【弁護士が判例解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

多くの人にとって、マイホームは「一生のうち最も高額な買い物」でしょう。しかし、せっかく買ったマイホームの隣人が“最悪”で、しかも仲介業者からその存在を隠されていたら……買主の落胆と怒りは想像に難くありません。では、そのような“迷惑行為を繰り返す隣人の存在”を隠していた仲介業者を訴えた場合、損害賠償を勝ち取れるのでしょうか。弁護士の北村亮典氏が、実際の裁判事例をもとに解説します。

裁判所が住民の存在を「瑕疵にあたらない」と判断したワケ

他方で、上記のような迷惑行為を行うCの存在は、隣室である本件居室の居住者において、心理的に一定程度その使用を制限されるものであることは否定できないとしつつも、以下のように、購入時の価格3,100万円からわずかな減額(150万円)でマンションが売却できたこと等を理由に、瑕疵には当たらないと判断しました。

 

「本件居室については、今後の使用を前提として、賃貸物件や売却物件としての募集をかけており、仲介業者の担当者も、Cの迷惑行為の存在に関し、成約に至るか否かは購入希望者が気にする度合によるとしている」

 

「また、実際にも、隣室であるCの迷惑行為の事実や原告の夫の本件居室内での死亡の事実を告知したうえで、原告の購入から約3年が経過した時点で、原告の購入時の代金3,100万円から150万円を減額した代金2,950万円でDに売却することができている

 

さらに、本件居室の購入希望者がなかなか現れなかったことや、購入希望者から購入を断られたことについては、本件居室が日当たりの悪い1階に位置することや、原告の夫が本件居室内で自死したことも原因となっていたことが認められる」

 

「以上によれば、上記のような迷惑行為を行うCの存在は、隣室である本件居室の居住者において、心理的に一定程度その使用を制限されるものであることは否定できないとしても、一般人であれば誰もがその使用の際に心理的に十全な使用を著しく妨げられるといえるような、一般人に共通の重大な心理的欠陥があるとまではいえない

 

したがって、Cの存在により本件居室が売買の目的物として通常保有すべき品質・性能を欠いているとして、民法570条の「瑕疵」があるとはいえない」

 

なお、裁判所は、結果的に売却金額が購入時より150万円の減額となったことについては、

 

「代金の減額事由としては、購入から約3年の経年劣化、本件居室が1階に位置すること、原告の夫が本件居室内で自死したことなど、Cの存在以外の事由も考えられることからすれば、瑕疵と相当因果関係のある損害ともいえない。

 

また、原告の夫の自死がCの迷惑行為と相当因果関係を有することについて認めるに足りる証拠はない(原告の主張においても一因とするにすぎない)」

 

と述べて、やはり隣人の住民の存在による損害には当たらないと判断しています。

 

本件は、結果的に、この隣人の存在を原因とした売却価格の減額が発生しなかったと考えられることを理由に、瑕疵には当たらないと判断したものと考えられます。

 

しかし、一般的には、迷惑行為を行う隣人の存在は、買主にとって心理的に重大な欠陥となりうる場合もありますので、このような隣人の存在については、売主において知り得たということであれば売買の際には十分に説明しておくことが無難といえます。

 

※この記事は2023年10月1日時点の情報に基づいて書かれています(2023年12月5日再監修済)。

 

 

北村 亮典

弁護士

大江・田中・大宅法律事務所

 

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※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを、北村氏が再監修のうえGGO編集部で再編集したものです。

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