多くの人にとって、マイホームは「一生のうち最も高額な買い物」でしょう。しかし、せっかく買ったマイホームの隣人が“最悪”で、しかも仲介業者からその存在を隠されていたら……買主の落胆と怒りは想像に難くありません。では、そのような“迷惑行為を繰り返す隣人の存在”を隠していた仲介業者を訴えた場合、損害賠償を勝ち取れるのでしょうか。弁護士の北村亮典氏が、実際の裁判事例をもとに解説します。
裁判所が下した判決は…
裁判所は、まず570条の「瑕疵」の定義について、
「売買の目的物が通常保有すべき品質・性能を欠いていることをいい、目的物に物理的欠陥がある場合だけでなく、目的物の通常の用途に照らし、一般人であれば誰もがその使用の際に心理的に十全な使用を著しく妨げられるという欠陥、すなわち一般人に共通の重大な心理的欠陥がある場合も含むと解される」
としたうえで、結果として、裁判所は、本件においては隣室の住民の存在は「瑕疵」には該当しないと判断しました。
まず、隣室の住民(判決文では「C」とされています。)の迷惑行為については、
「Cは、平成23年頃から頻度にはばらつきはあるものの継続して、昼夜を問わず数分ないし10分程度、物音がうるさいとか物が盗まれたなどと大声を出してベランダで叫ぶ、ラジカセを大音量でかける、壁等を強く叩く、本件マンションの居住者に対し、携帯電話で撮影する、追いかける、意味不明な発言をする、難癖をつける、怒鳴りつけるといった迷惑行為をしていたことが認められ、Cの隣室に居住していた原告は、本件居室で生活する際に、生活音を静かにしたり、外出する際には周囲の様子を伺うなど、一定程度生活や行動に制限を受けていたことは認められる。
また、Cの存在は本件居室の購入希望者(仲介業者に対して本件居室の購入につき何らかの関心を示した者。以下同じ)に購入を断られる原因のひとつとなっていたことも認められる」
と認定しました。
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大江・田中・大宅法律事務所
弁護士
慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。神奈川県弁護士会に弁護士登録後、主に不動産・建築業の顧問業務を中心とする弁護士法人に所属し、2010年4月1日、川崎市武蔵小杉駅にこすぎ法律事務所を開設。2022年11月30日より大江・田中・大宅法律事務所に所属。
現在は、不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理等に注力している。
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