(※画像はイメージです/PIXTA)

日銀が11月28日に発表した2023年9月中間決算を発表において、日銀が保有する日本国債の価格が下落し「含み損」が過去最大の10.5兆円に達したことがわかりました。このこと自体は、直ちに日銀や国の財政、ひいては国民に悪影響を及ぼすものではありません。しかし、警戒しなければならないリスクが他にあります。どういうことか。債券の値動きのしくみに触れながら解説します。

国債の値動きのしくみ

今回、日銀が保有する日本国債に「含み損」が発生している理由は、日本国債の価格が下落しているからです。そこで、まず、国債の値動きのしくみについて、解説します。

 

国債は、国が借入をするのと引き換えに発行する債券です。あらかじめ「償還期間」と、最後に返ってくる「額面価額」が決まっています。

 

国債の保有者は、満期までの間、決まった額の「利金」(利子)を受け取ることができます。そして、償還期間が満了したら、「額面価額」が返ってきます。

 

償還期間中は市場で売り買いすることもでき、価格が変動します。ちなみに、「利金」の額は決まっているので、国債価格が下落すると、利率(利金が国債価格の何%か)は高くなります。逆に、国債価格が上昇すると利率は低くなります。

 

そして、「10年物国債」の利回りは、後述する「長期金利」の指標ともなるので、国債価格が下落して国債の利回りが上昇すると、それに合わせて長期金利も上昇することになります。

 

現在は、日本国債の価格が下落しているので、日銀が保有する日本国債が大量の含み損を抱えているということです。他方で、日銀は日本国債の保有者として利金を受け取っており、2,068億円の黒字が発生しています。

日本国債が下落している理由は「日銀の金融政策」にある

では、なぜ現時点で日本国債は下落しているのでしょうか。その理由は、日銀が現在とっている大規模金融緩和政策にあります。

 

日銀は、2013年以降、「物価上昇率2%」が安定的に持続する状態を作り出すことを目標として、大規模な金融緩和政策をとってきました。「量的・質的金融緩和」です。これは、「長期金利」をきわめて低い水準にキープすることです。長期金利とは、銀行等の金融機関が1年以上の貸し出しを行う場合に適用される金利のことです。長期金利は、企業・個人による長期の借入の需要に応じて変動します。

 

ちなみに、長期金利と区別すべきものとして「短期金利」があります。これは日銀が民間の銀行に貸し出しを行う際の金利です。長期金利が長期資金の需給関係によって決まるのと異なり、短期金利は日銀が政策的に決めるので「政策金利」ともよばれます。

 

伝統的な経済学の理論では、長期金利を引き下げると以下の効果があるといわれます。

 

・企業・個人が融資を受けやすくなる

・定期預金よりも、投資効率の高い株式等への投資が活発化する

・円安になり、海外からの投資が活発化する

 

長期金利の引き下げがもたらすこれらの効果により、企業の業績の向上、消費の拡大、物価の上昇、賃金の上昇につながるということです。

 

そして、日銀は長らく、長期金利を低く抑えるために以下の2つの方法を併用してきています。

 

・短期金利(政策金利)を「マイナス」にする

・日本国債を大量に買い入れる

 

日銀が国債を大量に買い入れれば、「買い」が増加し、国債価格は上昇します。その反面、長期金利が下落します。

 

なお、日銀はこの超低金利政策に加え、株価を上昇させるために上場投資信託(ETF)を購入しており、こちらは「含み益」が23兆5,794億円となっています。

 

しかし、日銀の大規模金融緩和政策は、実際には、現状、当初期待されたほどの効果は上がっていません。また、諸外国がコロナ禍から経済が回復したことにより「利上げ」を行うようになったため、内外の金利差が拡大し、円安が発生しています。しかも、追い討ちをかけるように、ロシアのウクライナ侵攻による世界的にエネルギー価格・食料価格が上昇し、円安と相まって、国民の生活に大きなダメージをもたらしています。

 

そこで、日銀は物価高騰の長期化を受けて、これまでの超低金利政策に実質的に修正を加えています。7月と10月に相次いで長期金利の上限許容度を引き上げる「イールドカーブ・コントロールの柔軟化」を行っています。

 

これにより、長期金利が上昇する反面、国債価格が下落し、含み損が生じているのです。

 

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