一般的に、「意思が強い人」は少数派なので…
世の中には、意思が弱い人が大勢います。というよりも、意思が強い人は少数でしょう。ダイエットの本が売れるのは、ダイエットがむずかしいからです。もしもダイエットが簡単なら、わざわざ金を出して本を買う人はいないでしょうから。
読者がダイエットや禁煙に苦労したことがなく、夏休みの宿題を泣きながら最終日に必死でやった経験もないなら、読者は少数派の「意思が強い人」かもしれません。その場合には、本稿は必要ないかもしれません。しかし、そうでないなら、本稿がなんらかの役に立つかもしれませんよ。
給料は先に貯金分を引き、次回の給料日まで「残金で暮らす」
老後資金や住宅資金を貯めようと思う場合の障害は、日常生活でつい贅沢をしてしまうこと、そして、一点豪華主義で多額の出費をしてしまうことでしょう。
「できるだけ倹約をして、次の給料日に残っている分を定期預金にしよう」と考えているだけでは、つい贅沢をしてしまい、預金が残らないということになりがちですので、給料を受け取ったら一定額を定期預金して「次の給料日までは残金で暮らそう」と決めるほうがよいでしょう。
毎月定期預金を設定するのは面倒なので、金融機関に「毎月一定額を定期預金にして下さい」と頼んでおけばいいと思います。筆者としては、定期預金よりも投資信託の積み立て投資がよいと考えていますが、そのあたりは別の機会に。
定期預金等にしておくと、もしかすると一点豪華主義の出費も抑えられるかもしれません。「自動車を買い換えようと思ったけれど、せっかく貯めた定期預金を取り崩すのはもったいないから我慢しよう」と考えるかもしれないからです。定期預金の金利もほぼゼロなので、理屈で考えればおかしいのですが、人間の心理は理屈通りには動かないものです(笑)。
意志が弱い人のための「強い味方」…親、勤務先、銀行員
ダイエットを決意したら、周囲に宣言しましょう。そうすれば、「痩せた?」と聞いてくれる親切な? 人が出現するでしょう。それに対して「明日から痩せる」とは言いにくいので、おのずとダイエットに熱が入る、というものです。
貯金も同じことです。貯金を宣言すると「貯まった?」と聞いてくれる人が出現するので、贅沢をする気持ちが抑えられるでしょう。気をつけるべきは、「貯まったなら、少しくらい飲み会に付き合えよ」と誘われても迂闊に付き合わない、ということですね。
他人に律してもらう、という意味では、親に「老後資金を貯めるから」と宣言した上で預金通帳を預けてしまう、という選択肢もあります。親の反応が気になって「自動車を買うから預金通帳を返してくれ」などとは言い出しにくいでしょうから。
社内預金もよいでしょう。給料天引きで預金してくれるというメリットに加えて、引き出す際に人事担当者に申し出る必要があるので、チョッと恥ずかしい、という気持ちを持つことができるからです。
筆者が最強だと思っているのは、若いときに住宅ローンを借りて自宅を購入してしまうことです。贅沢をしようと思っても、銀行が定期的に預金口座から元利金を引き落としてくれるので、贅沢をせずに済みます。銀行の親心に感謝です(笑)。
若いときに住宅ローンを借りれば、定年前に返し終わるでしょうから、定年後は退職金と年金で何とか暮らせるはずです。定年前に頑張って老後資金を貯めたり、定年後も元気な間は働いたりすれば、老後もささやかな贅沢が可能でしょう。
iDeCo、財形貯蓄等を活用しよう
iDeCo(個人型確定拠出年金)という制度があります。税制上の優遇措置で、掛け金には限度がありますが、限度内の掛け金については所得税等の計算の際に所得控除となりますし、投資によって得られる売買益や配当収入等が非課税になる、という制度です。是非検討すべきだと思いますので、別の機会に詳述します。
本稿が着目するのは、iDeCoは60歳まで引き出すことができない、という特徴です。これは浮き沈みの激しい自営業者等にとってはデメリットとなり得ますが、普通の人にとっては「意思が弱い国民が老後資金を貯められるように」という政府の親心なのです。その意味でも、しっかり利用しましょう。
財形貯蓄の利用もお薦めです。一定限度まで金利が非課税となる、というメリットは、現在の低金利では大きくありませんが、それでも「せっかく貯まっているのを引き出すのは勿体ない」という意識を持つことはできるでしょう。
場合によっては非課税メリットが受けられなくなりますから、それも引き出すのを躊躇する理由となり得るでしょう。非課税となっている金額はわずかですが、上記のように人間の感情は合理的ではないので、それを利用するのです。
そして、引き出すときに人事担当者に申し出る必要があるという点は、上記社内預金の場合と同じですね。
本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。
筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。
塚崎 公義
経済評論家
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