夫急逝…おしどり夫婦に訪れた突然の別れ
山形県在住の田中詩織さん(仮名:75歳・女性)は、年上の夫、田中将さん(仮名:80歳・男性)と2人穏やかに日々を過ごしてきました。
夫婦に子供はいませんでしたが、その分夫婦で過ごす時間を大切にしようと心掛けていたので、夫婦仲はとても良好であり、近所でも「おしどり夫婦」と評判になるほどです。
将さんはもともと中小企業の営業担当者として、バリバリ働いていましたが、定年退職してからは、会社から支払われた約1,000万円の退職金を切り崩しながら生活を続けてきました。
しかしある日、将さんが散歩の途中で突然倒れてしまい、そのまま帰らぬ人に……。
詩織さんは、悲しみに暮れながらもお葬式の準備などを進め、ようやく気持ちもひと段落したころ、一本の電話がかかってきたのです。
その電話は、将さんの妹である静香さん(仮名:72歳・女性)でした。詩織さんは、将さんに妹が1人いることを知っていましたが、あまり仲がよくなかったため、親戚づきあいはまったくと言っていいほどなかったのです。
詩織さんも静香さんとは若いころに一度か二度しか会ったこともなく、今回のお葬式にも来ていたなかったので、なぜいまさらになって静香さんから電話がかかってくるのか理解できませんでした。
疎遠の義妹から一本の電話が…
電話に表示された静香さんの名前に驚きながらも、おそるおそる電話に出る詩織さん。
静香さんは開口一番に「兄さんが亡くなったでしょう? 兄さんは、仕事が大好きでお金もいっぱいもらっただろうから貯金もあるだろうし、早いうちに遺産をもらえると助かるんだけど……」と言ってきたのです。
詩織さんは、弔意も示すことなく、突然お金を要求する静香さんの電話に腹が立ちました。それに、なぜいままで付き合いがまったくなかった義妹の静香さんにお金を渡さなければいけないのか理解できません。
「あなたと将さんはこれまで全然兄弟として関わっていなかったじゃない。将さんは確かにもらった退職金を貯金として残してくれたけど、これは私の生活に残してくれたものなので、あなたにあげるお金は一円もありません」と強めに断りました。
すると静香さんは、「義姉さんはなにもわかってないのね。私は家族なんだから、義姉さんがなにを言っても、私には遺産をもらう権利があるの。納得いかないなら出るとこに出ても構わないから」と言い放たれ、電話は切れてしまいました。
将さんが残してくれた遺産といっても、せいぜい夫婦の生活費として使っていた貯金くらいしかありません。
――この貯金が減ってしまったら、私のこれからの暮らしはどうなってしまうのだろう。本当にお金を静香さんに渡さなければいけないの?
詩織さんは不安のあまり泣き叫びました。
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