(※画像はイメージです/PIXTA)

すべての自動車ユーザーが加入を義務付けられている「自賠責保険」の保険料が2023年4月から大幅に引き下げられています。しかし、同時に「被害者保護増進等事業の付加賦課金」が新たに賦課されるようになったことはご存じでしょうか。その背景に「自賠責保険」の保険料の運用益約6,000億円が「一般会計」に貸し出されたまま返済の目途が立っていないという問題があります。どういうことなのか、本記事で解説します。

自賠責保険の保険料「引き下げ」の影で…新たな「賦課金」が発生

自賠責保険の保険料は2023年4月に大幅に引き下げられました。損害保険料率算出機構の資料によると、すべての車種・地域・保険期間をあわせた基準料率の改定率の平均が「-11.4%」となっています。

 

ただし、増減の内訳をみると、以下のようになっています。

 

【保険料の増減の内訳】

・純保険料率:-12.4%

・社費率・代理店手数料率:-0.2%

・被害者保護増進等事業に充当するための賦課金の新設による引上げ相当分:+1.2%

 

このうち、「純保険料」は、将来支払われる保険金に充てるためのお金であり、いわば「保険の原価」です(その他は「付加保険料」といいます)。純保険料が引き下げられた理由について、損害保険料率算出機構は、交通安全にかかる政府の各種施策等によって収支が改善していることや、自動車の安全技術が向上したことに加え、「過去契約分の収支差額」の累計と「利息」の蓄積を合計した「滞留資金」が増加したことを挙げています。

 

もし、「被害者保護増進等事業に充当するための賦課金の新設による引上げ相当分」がなければ、保険料トータルでの値下げ幅は「-11.4%」ではなく「-12.4%」だったということです。

「被害者保護増進等事業に充当するための賦課金」が新設された理由

では、2023年4月から新設された「被害者保護増進等事業に充当するための賦課金」(以下「賦課金」)とはどのようなものでしょうか。国土交通省の説明によれば、賦課金は、以下のような被害者支援・事故防止対策のために使われることになっています(自賠責保険公式HP参照)。

 

【賦課金の用途】

・重度後遺障害の専門病院運営

・重度後遺障害の方への介護料支給

・「介護者なき後」のサポート

・後遺障害の方への社会復帰の促進

・交通遺児の支援

・自動車事故防止対策

 

これらは、本来、2022年3月以前に自賠責保険料の一部を国が運用して得られた運用益による「積立金」によって賄われてきたものです。

 

すなわち、2002年3月以前は国土交通省が保険会社から保険料の一部を受け取って「再保険事業」を行い、その運用益が「積立金」として国の「自動車安全特別会計」に組み入れられ、被害者支援・事故防止対策のため「一般会計」とは独立した財源として扱われていました。

 

2002年4月に自賠責保険の制度が変わり、国の「再保険事業」はなくなりましたが、それまでの「積立金」は被害者支援・事故防止対策のための「自動車事故対策勘定」として「自動車安全特別会計」の一部に引き継がれました。

 

また、これに加え、新たに以下が「自動車安全特別会計」に組み入れられるようになりました。

 

・自動車ユーザーからの検査・登録手数料等(自動車検査登録勘定)

・自動車ユーザーの保険料の一部である賦課金等(保障勘定)

・空港運送事業者からの空港使用料当(空港整備勘定)

 

現状のままでは、「自動車事故対策勘定」の「積立金」が10年以内に枯渇する可能性があるため、自賠責保険の「付加保険料」の一部として、新たに「被害者保護増進等事業に充当するための賦課金」を徴収することになったのです。

 

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