「89歳までもつなら大丈夫では?」という考えは危険
厚生労働省の「令和4年簡易生命表(女)」によると、75歳の女性は平均余命が約15.67年。90歳まで生きられる計算です。
月々の費用を28万円でシミュレーションした場合、89歳までの資金はあるので、少し無理をしても大丈夫と思う人もいるでしょう。しかし、今は自立している母親も、将来的には介護や医療費の負担が増えていくかもしれません。また、実際に100歳まで生きた場合を考えると、費用負担の少ない施設へ転居しておいたほうが、少なくとも費用面では安心です。
Aさんは意を決して「母さん、ごめん。いまの場所で楽しそうに過ごしているところ、心苦しいのだけれど、引っ越してくれないか?」と母親に伝えました。
母親は少し寂しそうな顔をしたものの、すぐに「私には少し贅沢すぎたね、あなたたちに会えるだけで嬉しいんだから、大丈夫よ。ありがとう」と穏やかな様子で返事をしました。
老人ホーム選びの注意点とポイント
■サービスについて
まず、パンフレットに載っている費用は「必要最低限」です。入居してから利用する予定のサービス費用について、施設スタッフに確認しておくと安心でしょう。
パンフレットには居住費・食費・管理費など基本的な項目は記載されています。しかし、施設によっては「管理費」に安否確認サービスや生活支援サービス費・水道光熱費が含まれていない場合や、そもそも食費が記載されていないこともあるのです。
また、どのようなオプションサービスがあるのかも、費用とあわせて確認しておきましょう。契約書や重要事項説明書に金額が記載されていることもあるため、しっかり目を通すことをおすすめします。
■食事について
毎日の食事は、生活していくなかで重要な要素のひとつです。食事提供サービスの有無、食事の味付けは好みか、提供される時間帯がこれまでの生活習慣とあっているか、朝食はパン食・和食・シリアルと選択肢はあるのかなど、体験入居や見学会を活用して、費用面とあわせて確認しておきましょう。