富裕層は“警戒しすぎる”くらいでちょうどいい?
相続税調査のときに聞いた話ですが、富裕層の家にはいろいろな“売り込み”が多いそうです。取引のある証券会社や保険会社はもちろん、さまざまな業者の訪問販売も多いそうなのです。
やはり高級住宅街に大きな家をもっている人は、どうしても狙われてしまうのでしょう。
警視庁による犯罪被害者の意識調査によると、裕福(「裕福だと思う」と「やや裕福だと思う」の合計)と回答した人の比率が23・9%であり、これは一般の回答者17・7%よりも高くなっています。この結果をみても、富裕層の場合は警戒しすぎるくらいでちょうどいいのかもしれません。
ちなみに私は、相続税調査をしたときに「詐欺師」と間違われたことがありました。初日の聞きとり調査は順調に進んだのですが、後日、相続人である妻から税務署に問い合わせの連絡が入ったのです。その用件は、「おたくの税務署に、小林さんという職員は本当にいますか?」というものでした。
私は税務調査の場で身分証を見せ、名刺をお渡ししていたのですが、それでも念のために確認の電話を入れたようです。その電話を私につないでもらい、あらためて自分が国税職員であることを、時間をかけてお伝えしました。
話を聞くと、高齢者を狙った詐欺を疑っていたそうです。私が預金口座の情報などを提出してもらったり、財産について聞いたりしたので、不審に思われたのでしょう。
このように心配事をきちんと確認することは、大切なことだと思います。
昨今は行政の職員などを名乗って富裕層の自宅を訪ね、詐欺をはたらくケースも出ているようです。そのようなときに相手を完全に信じるのではなく、多少疑いの目をもつことは、身を守るうえで有効です。
富裕層の多くは礼儀正しく精神的なゆとりをもっている一方で、常に警戒を怠りません。だからこそ財を成すことができたという側面は、確実にあります。
人を疑いすぎるのも、まったく疑わないのも、どちらも問題でしょう。適度な距離感やバランス感覚をもって人づき合いをすることは、私たちも意識しておきたいものです。
小林 義崇
マネーライター
Y-MARK合同会社代表/一般社団法人かぶきライフサポート理事
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